ヒースロー空港、第3滑走路新設を含む拡張計画案を発表

(英国)

ロンドン発

2019年06月21日

英国ロンドンのヒースロー空港は6月18日、第3滑走路新設を含む空港拡張計画に関する具体案を発表した。空港は6月18日から9月13日までの12週間、本計画案についてパブリック・コンサルテーション(意見公募)を実施、その結果を踏まえ、2020年中に拡張計画の最終案を確定し、運輸相の許可を得たいとしている。2026年末までに第3滑走路を開業し、2050年には最終的に完成することを目標に掲げている。発表された第3滑走路計画案の要点は以下のとおり。

  1. 全長3,500メートルの第3滑走路を空港北西部に建設する。これに伴い、用地〔950エーカー(約385万平方メートル)〕接収と住宅761戸、小学校1つの立ち退きが必要となる。
  2. 第3滑走路が横断する大ロンドン環状高速道路M25について、地下トンネルを建設し移設する。南北に流れる河川も同様に、地下水路を建設する。国道A4、A3044は迂回路を建設する。
  3. 空港拡張により、表のとおり、利用客数、発着便数拡大を実現する。
  4. 利用者数、発着本数の増大に対応するため、空港の南北に4万6,000台を収容する駐車場を建設、全体で、収容台数を5万台以上増やす。第2、第5ターミナルを拡張するほか、宿泊施設などを増設し、利用客の利便性向上を図る。
  5. 地域住民の騒音への苦情に対して7億ポンド(約952億円、1ポンド=約136円)を投じて16万戸以上に防音設備を設置するほか、夜間6時間半の飛行禁止時間などを設ける。地域の生態多様性を重視し緑化を進めるほか、歴史的施設の保護や地域住民へのサービス施設などを整備する。
表 拡張後のヒースロー空港の利用者数、発着便数、貨物取扱量予測

ヒースロー空港の拡張、特に第3滑走路の建設については、住民立ち退きや騒音、環境汚染などへの懸念などから、数十年にわたり反対の声が上がっている。空港は、2018年6月25日に下院で承認された空港政策綱領(Airport National Policy Statement:ANPS)(2018年7月3日記事参照)に基づき計画を進めているが、反対派は同綱領に基づく計画推進のプロセスに対して、法的異議申し立てを行った(高等法院は2019年5月1日にこれを却下)。空港は今後、2020年までに政府の計画調査委員会(PINS)に対し、開発同意(Development Consent Order:DCO、注)を申請するとしているが、引き続き、反対派の抵抗が予想される。

(注)開発同意(DCO)は、「国家的に重要なインフラプロジェクト(NSIP)」に対して取得が課せられている。

(岩井晴美)

(英国)

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