ヒースロー空港、第3滑走路建設へ前進

(英国)

ロンドン発

2018年07月03日

下院は6月25日、ロンドン・ヒースロー空港の3本目の滑走路新設計画を415対119の賛成多数で承認した。

計画の草案は2016年10月に閣議で承認され、2017年の2度の公開協議を経て改定された綱領案が2018年6月5日にあらためて閣議で承認。今回の下院での承認となった。同空港の拡張をめぐっては、住民立ち退きや騒音、環境汚染などへの懸念などから数十年にわたって賛否が割れており、近年も政権交代を機に計画が撤回されるなど紆余曲折を経てきた。今回の下院での承認で、ようやく政府・議会が結論を出した格好だ。

早ければ2026年にも供用開始

新滑走路は空港の北西部に隣接する敷地に建設され、最低でも全長3,500メートルを確保し、年間26万回以上の発着を実現する。これにより2040年までに旅客数が2,200万人、旅客便は8万5,000便増えるとされる。建設工事は3年以内に着工し、早ければ2026年、遅くとも2030年の供用開始を目指す。総事業費は推計140億ポンド(約2兆440億円、1ポンド=約146円)で、国費は投入せずに事業収入で賄うとしている。現在、交通省が委託した英国建設大手コスタイン・グループがフランス鉄道コンサルタントのシストラと提携して、運営会社ヒースロー・エアポートが提示した基本計画の信頼性調査を実施している。

ヒースローはじめロンドンの空港は近年、収容能力の制約に直面している。長年にわたりおおむね世界2~3位の旅客数を誇ってきたヒースロー空港は、北京、ドバイ、ロサンゼルス空港などの急進によりその地位は低下。2017年の旅客数は7位まで下落している(図参照)。

図 主要空港の年間旅客数の推移

2030年代にはロンドンの5つの空港全てが収容能力の限界に達すると推計される中、ヒースロー空港は第3滑走路の新設で巻き返しを図る。新滑走路の誘致でヒースロー空港に敗北した格好のロンドン・ガトウィック空港も6月、旅客搭乗棟の拡充など空港施設の充実のため、向こう5年間で11億1,000万ポンドを投資する計画を明らかにした。

(宮崎拓)

(英国)

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