米国の対中輸入額、第1弾の制裁対象品目は前年比8.0%減

(米国、中国)

米州課

2019年06月05日

米中貿易摩擦の激化により、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中追加関税品目が拡大している(表1参照)。

表1 米国による第1弾から第4弾(案)の対中国追加関税措置

米国は2018年7月から計3弾の追加関税賦課を発動した(注)。第3弾に対しては、トランプ大統領は25%への追加関税引き上げを延期していたが、2019年5月9、10日の米中通商協議で進展がみられず、米国通商代表部(USTR)は5月10日から25%に引き上げた(2019年5月9日記事参照)。さらに、USTRは5月13日、第4弾として3,805品目を対象に最大で25%の追加関税を課すとしている(2019年5月14日記事参照)。

ジェトロでは、米国側の追加関税措置が中国からの輸入にどう影響を与えているかを分析するため表2のとおり制裁弾別に2018年の対中輸入額をまとめた。

表2 米国の制裁弾別の2018年の輸入額

2018年の対中輸入額は総額で5,395億ドルと前年比6.7%増加しており、弾別にみると、第3弾対象品目が前年比10.1%と最も高い伸びを示し、第2弾対象品目も7.3%増加した。一方、第1弾対象品目は8.0%の減少となった。

輸入増加に寄与した品目をみると、制裁開始が2018年9月下旬だった第3弾の対象品目や、まだ追加関税が賦課されていない第4弾候補が上位に挙がっており、プリント基板実装品と自動データ処理装置の寄与度がそれぞれ0.23ポイントと最も高く、ビデオゲーム用コンソールが0.17ポイントで続いた(表3参照)。これらの上位品目は、2018年第3四半期(7~9月)までは前年同期比で2桁の高い伸びを示したことから、制裁開始前の駆け込み需要によるものとみられる。

表3 輸入の増加、減少に寄与した主な品目

一方、輸入の減少に寄与した項目をみると、第85類の電気機器の減少が顕著で、携帯電話がマイナス0.27ポイントで、LED以外の半導体デバイス用ダイオードがマイナス0.1ポイント、半導体不揮発性記憶装置や通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品の追加関税の対象となったアルミニウム合金がそれぞれマイナス0.09ポイントと続いた。

輸入額が2017年から減少した第1弾の対象品目では、トランシーバーを除く送受信器の寄与度はマイナス0.09ポイントで、磁気ディスク装置とプリンター部品はそれぞれマイナス0.08ポイントだった。これらの品目は、2018年第3四半期以降、前年同期比で2桁のマイナスで推移しており、制裁による影響が顕著に示されている。

(注)米国は、2018年7月6日から第1弾として818品目(対中輸入額340億ドル相当)に対し25%の追加関税賦課を開始し(2018年7月9日記事参照)、8月23日から第2弾として279品目(160億ドル相当)に25%の追加関税(2018年8月24日記事参照)、9月24日からは第3弾として5,745品目(2,000億ドル相当)を対象に10%の追加関税を発動した(2018年9月25日記事参照)。

※適用除外の項目を設け、各項目の金額を更新。

(中溝丘)

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