保護主義に危機感強める世界の商工会議所

(EU)

ブリュッセル発

2019年06月21日

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は6月19日、世界の国・地域商工会議所の連合組織である「グローバル商工会議所プラットフォーム(GCP)」がまとめた「2019年版・世界経済調査」(調査期間:2019年4~6月)の結果概要を明らかにし、「(世界にまん延する)保護主義と十分な市場アクセスの欠如」が2019年の世界の産業界にとって、最重要課題との現状認識を発表した。

通商摩擦緩和に向けて、G20大阪サミットでの論議に期待

欧州商工会議所は、GCPとして2019年の世界経済が徐々に下降傾向にある点(2019年6月20日記事参照)に警戒感を強めているとする。この背景には、世界で相次ぐ貿易制限的措置の発動など「保護主義と十分な市場アクセスの欠如」があるとしている。また、これに続く世界経済の課題として、英国のEU離脱(ブレグジット)問題などを含む「政治的不安定」を指摘。このほか、GCPは「所得格差」「財政(債務)問題」に伴うリスクについても、2019年の世界経済に影を落とすとしている。

欧州商工会議所のクリストフ・ライトル会頭は「政策決定者は世界の産業界の声に真摯(しんし)に耳を傾け、国際貿易システムの機動性・予見可能性を確実にすべき」「さもなければ、世界全体として経済成長の減速に直面することになる」とコメント。世界の政治的指導者に注意を促した。

GCPはまた、保護主義に対抗するためのWTOの抜本的改革についても支持する方針を示し、紛争解決手続きの迅速化や上級委員会の在り方を見直す必要がある、としている。

このほか、GCPはデジタル時代に対応した教育や人材育成の問題(2019年6月20日記事参照)についても取り上げ、デジタル技能習熟のための職業訓練に関するベストプラクティス共有などの面で、地域間で連携を進めるべきとしている。

欧州商工会議所は、GCPが世界の通商摩擦緩和のため、6月28~29日に開催予定のG20大阪サミットで、今回の調査で明らかになった世界の産業界の問題認識が検討課題として取り上げられることに期待しているという。

なお、GCPは世界の国・地域レベルの商工会議所の連合組織で、欧州商工会議所のほか、米国商工会議所、アジア商工会議所連合会(CACCI)や中国国際貿易促進委員会(CCPIT)および中国国際商業会議所(CCOIC)など16団体が参画、現在の代表はユーロチェンバースのライトル会頭が務めている。今回の分析は、これら会員団体に対する意識調査に基づいて、GCPがまとめている。

(前田篤穂)

(EU)

ビジネス短信 92b0dfe5a661d279