中国で豚肉の需給が逼迫

(中国、米国)

中国北アジア課

2019年06月28日

中国では、2018年夏からアフリカ豚コレラの被害が全土に広がり、依然として猛威を振るっている(2019年4月22日記事参照)。これにより、豚肉の国内生産量が減少し、豚肉価格が上昇しており、国民生活に大きな影響を与えている。

農業農村部によると、6月20日までに113万頭以上の豚が殺処分となっている。5月の豚の飼育数は前年同月比22.9%減。豚肉の卸売平均価格は1キログラム当たり20.63元(約330円、1元=約16円)と、29.3%上昇した(「上海証券報」6月27日)。

米国からは高関税が課されるも、輸入額は増加傾向

中国は、2018年7月6日に米国の対中制裁関税(第1弾)に対する報復措置として、豚肉を含む畜産物、農産物、自動車、水産品など約340億ドル規模の米国原産の輸入品に25%の追加関税を賦課。これにより、米国から輸入される豚肉の関税は、20%(冷凍は12%)から45%(37%)に引き上げられた。シェア5位(2018年上半期)だった米国からの輸入額は、2018年末にかけて急激に減少。2018年下半期は前年同期比93.1%減と激減した。

中国の対米報復措置の1カ月後、8月3日に中国国内で初めてアフリカ豚コレラの発生が確認された。アフリカ豚コレラの流行に伴う国内生産量の減少を補うため、米国からの輸入は減少したが、海外からの輸入は増加した。

対米輸入も2019年の年明け以降は増加に転じており、1~5月の対米輸入額は前年同期比34.5%減と、減少幅は2018年下半期より縮小。5月単月の輸入額は、追加関税の賦課前の水準に戻っている(添付資料参照)。高関税にもかかわらず、中国が米国からも輸入を増やさざるを得ない状況に陥っているといえる。

さらに、6月26日には、カナダ産食肉の輸入について、複数の証明証の偽造が発覚したとして、一時的な輸入停止措置を発表(2019年6月27日記事参照)。カナダは中国にとって3位(1~5月実績)の輸入先であることから、この禁輸措置による影響は大きいとみられる。

農業農村部市場・情報化司の唐珂司長は6月26日のプレスリリースで、「供給逼迫により、2019年後半の豚肉価格の上昇圧力は依然として大きい」とコメントしている。中国のコンサルタント会社である卓創資訊の張莉莉アナリストは「今後、代替需要として、牛、羊、鶏といった豚肉以外の価格や販売量の上昇につながる」と予想している(「上海証券報」6月27日)。

(小林伶)

(中国、米国)

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