プーチン大統領、2025年までのヘルスケア発展戦略を承認

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月17日

ロシアではこれまで、平均寿命の短さやアルコール依存症患者の多さなどが社会問題となっていたが、近年、政府の努力により、平均寿命が10年間で5歳延びるなど、目覚ましい改善を見せている。プーチン大統領は6月7日、2025年までのヘルスケア発展戦略(2019年6月6日付大統領令第254号)を承認した。この戦略は2011年11月21日付連邦法第323-FZ号「ロシアの国民保健基盤」、2018年5月7日付大統領令204号「2024年までのロシア連邦発展戦略の課題と国家目標」などにひもづけで作成され、ロシアの医療・保健状況と課題、今後の数値目標などを規定している。

発展戦略ではヘルスケア発展の目的を、人口増加、平均寿命・健康寿命の伸長、死亡率・身体障害発生率の減少、国民が保健サービスを受ける権利の保護としており、2012年から2017年の医療・保健分野の活動で多くの成果を挙げたと、具体的な数字を用いて説明している(表1参照)。

表1 2012~2017年のロシアでの医療・保険分野の主な成果

他方で、課題・問題として、医療へのアクセス・品質、予防医療、最新の医療技術・医薬品の導入、循環器系疾患、がん、内分泌代謝、神経変質などの非伝染性疾患や、HIV、B型・C型肝炎、結核など感染症の拡大、医薬品・医療機器流通、衛生疫学監督システムなどがあると指摘。その解決方法として、a.医療施設インフラの整備、試験・診断機器の導入、ハイテク医療技術の導入、b.国民の健康管理(健康的な食事の摂取を含む)に対する意識向上、c.年1回以上の健康診断を含む予防システムの導入、d.感染症流行予防措置の実施、e.労働を通じた罹患を防止する法令・システム整備、f.リハビリ・療養システムの整備、g.医療従事者の人材育成と供給拡大、h.保健分野の統一情報システムの整備(医療実施状況、強制医療保険や年金基金、献血などの情報の統合)、i.医療分野の研究・開発加速化(基礎研究、個別化医療、バイオバンク、分子遺伝学的手法を用いた病理予測・診断・モニタリング、再生医療など)、j.医療の品質管理システムの導入(独立機関による評価実施を含む)、k.医薬品供給メカニズムの改善、l.強制医療保険基金管理と持続的安定性の確保、などを挙げている。

発展戦略の具体的な達成目標として、表2の数値を提示している。これに向け、2段階で措置を講じるとし、2019~2020年の間は、持続的な保健システム整備に向けた法律・財政面のメカニズムの確立や国家プロジェクト、医療従事者の供給拡大に向けた勧誘と育成、保健分野への投資誘致を目的とする環境整備を行い、2021~2025年には、医療品質の向上、医学の発展に寄与する新技術・サービスの導入、医薬品供給メカニズムの整備、強制医療保険による拠出システムの整備などを行うとしている。

表2 2021年および2025年までの数値目標

発展戦略の実施機関は保健省が担う。4月24日にベロニカ・スクボルツォワ保健相が行った2018年の活動報告でも、上述の内容の多くが盛り込まれている(2019年5月1日記事参照)。

(齋藤寛)

(ロシア)

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