ロシア鉄道、沿ボルガと極東を結ぶ特急コンテナ輸送サービスを開始
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2019年06月06日
ロシア鉄道の支社で、主として沿ボルガ連邦管区を管轄するクイビシェフ鉄道支社(注1)は5月30日、サマラ州サマラ市内のベジミャンカ駅からロシア極東・沿海地方ウラジオストク近郊のウゴリナヤ駅までの8,000キロの区間について、特急のコンテナ輸送サービスを開始したと発表した。同サービスは、沿ボルガ地域の中小企業、貨物輸送(輸出)企業、製造業者に大きな経済的な影響を及ぼし、ロシア極東とアジア太平洋市場への出口を提供するものとしている。
同輸送サービスは、クイビシェフ鉄道支社とコンテナ輸送大手トランスコンテナが実施。月1回の運行が予定されている。貨物はサマラ州および沿ボルガ地域の各荷主からベジミャンカ駅にトラックで集荷され、鉄道で沿海地方ウゴリナヤ駅まで輸送された後、カムチャツカ地方、マガダン州、サハリン州などの極東各地へ転送される。輸送日数は大幅に短縮され、従来の30日(沿線各地で集荷・積み込み作業が発生するため)から9日となる。輸送料金は割引が適用され、20フィートコンテナで約12%、40フィートコンテナで約11%安くなる。
報道によると、5月30日に出発した第1便は、40フィートコンテナ28本、20フィートコンテナ12本の合計40本のコンテナ貨物列車。貨物の中身はペンザ州、オレンブルク州、タタルスタン共和国の中小企業の製品で、屋根材、リノリウムなどの建材、農薬タンク、浴室備品、セラミックタイルだ(「グドク」紙6月3日)。
今回のサービス開始は、2019年3月にベジミャンカ駅に新しく45トンクレーンが導入されたことで実現した。トランスコンテナは将来的に、同駅からのアジア・太平洋市場向けの複合輸送サービスの提供も視野に入れる。
沿ボルガ連邦管区は、ロシア欧州部(ウラル山脈より西)に所在し、ボルガ川に沿い人口100万を超える都市が複数存在する大消費地。またサマラ州には、ルノー・日産・三菱アライアンスと資本関係を有する、ロシアの大手自動車組み立てメーカーのアフトワズの工場があり、周辺には日系自動車部品メーカーも進出しているほか、同連邦管区のウリヤノフスク州には複数の日系企業の工場も立地している(2019年5月28日記事参照)。同地域とロシア極東・日本を含むアジア太平洋地域間で、ブロックトレイン(注2)以外の鉄道輸送の利便性が高まることにより、日本企業のロシア国内での物流の選択肢と、ロシア極東から沿ボルガ地域に向けての商機が増えることが期待される。
(注1)ペンザ州、サマラ州、ウリヤノフスク州、タンボフ州、チェリャビンスク州、リャザン州、オレンブルク州、バシコルトスタン共和国、タタルスタン共和国、モルドビア共和国をカバーする。
(注2)コンテナ専用列車で、列車1編成の貨物全てが同一の起点と終点で輸送される。
(高橋淳)
(ロシア)
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