NTTデータ、初のAI集約拠点をバルセロナに設置

(スペイン)

マドリード発

2019年06月14日

NTTデータは5月21日、人工知能(AI)に関する知見をグループ横断的に集約するネットワーク「AI CoE(センター・オブ・エクセレンス)」をスペインのバルセロナに設置した。AI CoEはNTTデータとスペイン子会社エヴェリス(総合ITサービス)のデータサイエンティストやエンジニア約130人で立ち上げられ、今後各国のグループ会社のAI人材も参加する。バルセロナには、エヴェリスのオープンイノベーションラボがあり、欧州におけるAI中核拠点となる。

急速な市場拡大が予測されるAI分野で、ソリューションの開発や顧客へのサービス提供、技術人材の育成、発信事業によるプレゼンス向上を通じ、技術資産の集約や相互活用を進め、グローバル戦略パートナーとしての地位確立を目指す。同社はこれまでに、ブロックチェーン、アジャイル/DevOps(注)、デジタルビジネスデザインの3分野でCoEを設置済み。今回設置されたAI分野を加えた4分野におけるデジタル先進技術の人材を、2021年度末までに世界全体で約5,000人規模にすることを目指している。

スペイン最大の病院で蓄積した医療ビッグデータを基にノウハウ蓄積

NTTデータは、スペインで複数のAIプロジェクトを積み重ねてきた。その皮切りとなったのは、2017年1月からスペイン最大の病院であるビルヘン・デル・ロシオ大学病院(セビリア)の集中治療室(ICU)向けに実施されたスマートICUの実証実験(PoC)だ。

このスマートICUは、患者の合併症発症リスクを、AI技術によって予測し医師に通知するもので、実証に当たり、エヴェリス開発のICU向け拡張電子カルテシステムを用いて、同病院が2015年秋から蓄積してきた30億件以上の患者バイタルデータ(体温や血圧推移などの生体情報)などを基にNTTデータのAI/ビッグデータ技術を活用し、ICU入院患者に多い合併症を発症2時間前に予測し、重篤化防止を支援するAI予測モデルが開発された。

エヴェリスは、2018年4月には同院との間で、より広範な診断意思決定や業務支援を行う医療AIソリューションの開発協力に向けた提携(3年間)を締結した。

さらにエヴェリスは2019年4月には、EUの研究開発資金助成制度「ホライズン2020」の採択プロジェクトとして、深層学習やコンピュータビジョンなどの最新AI技術を活用し、神経疾患や悪性腫瘍の発見、がん発病予測において高精度の診断・治療ツールを開発する実証事業「ディープヘルス(DeepHealth)」にも参加。バイオメディカル分野のAIで足場を固めつつある。

関連記事として、特集:AIを活用せよ!欧州の取り組みと企業動向「企業が政府に大きく先行(スペイン)」を参照。

(注)短期間で開発運用サイクルを回すアジャイル手法、および開発部署と保守運用部署の連携(DevOps)に基づくソフトウエア開発。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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