デジタル貿易関連法の整備は道半ば

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年06月04日

南アフリカ共和国では、シリル・ラマポーザ大統領の下、第4次産業革命(4IR)推進に向けて、デジタル経済・貿易が議論されているものの、政策実行は限定的だ。

2018年7月にヨハネスブルクで開催された第10回BRICS首脳会議の主題は「4IRにおける包括的成長と共栄のための協力」だった(2018年7月31日記事参照)。会議で採択された「ヨハネスブルク宣言」で、デジタル経済推進について複数回にわたり言及されている。3月には南アと英国が共同で「コモンウェルス共同体デジタル連結性アジェンダ」を主導すると発表するなど、南アでは政府を中心にデジタル経済・貿易についての議論が進められている。

他方で、南アではデジタル経済・貿易にかかる定義や包括的なルール・国内法はいまだ定められていない。南ア電気通信・郵便サービス省は「ICT(情報通信技術)白書2016」で、電子商取引(EC)とECサービスの定義を明記したが、おおむねOECDの定義に準拠したものだ。ECに関連する法律で既に施行されたものとしては、電子通信商取引法(2002年施行)、消費者保護法(2008年施行)などがある。これらの法律で厳格に規定されていない部分を明確化する目的で、2013年に個人情報保護法、2018年にサイバー犯罪法が議会で可決されたが、いまだ施行されていない。個人情報保護法における、データ保護の対象に法人が含まれており、「EU一般データ保護規則(GDPR)」との整合性が取れていないとの意見もある。英国大手ソフトウエア・デベロッパー・ソフォスが2018年に実施した調査で、個人情報保護法への対応準備ができていると回答した南ア企業は34%にとどまる状況が明らかになった。

また、デジタル経済の推進には、通信インフラ整備やIT技術が大きな課題となる。南アのインターネット普及率は54%と、サブサハラアフリカ全体の20%を大きく上回っているが(世界銀行、2016年)、都市部や白人を中心とする中高所得者層に偏っていると南ア政府は問題意識を持っている。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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