第1四半期の米国の対中輸出額は2割減、中国の報復関税の影響顕著に

(米国、中国)

米州課

2019年06月27日

中国は2018年7月以降、米国による1974年通商法301条に基づく対中追加関税に対する報復措置として、米国原産の輸入品に対する追加関税を発動している(添付資料の表1参照)。これを受け、米国の対中輸出はどう変化しているか。米国商務省の統計を用いて、2019年第1四半期の米国の対中輸出額を、報復追加関税発動前の2018年第1四半期と比較した。輸出が減少している品目については、輸出代替国を調べた。

2019年第1四半期の米国の対中輸出額は259億9,400万ドルと、2018年第1四半期より18.8%減少した(添付資料の表2参照)。主要商品分類別にマイナスの寄与度が大きかったものをみると、鉱物性燃料(HTSコード:第27類)が前年同期比76.0%減の7億6,700万ドルと大きく減少したほか、大豆を含む種、果実、医薬・飼料用植物(第12類)が30.4%減の17億9,700万ドル、穀物(第10類)が97.2%減の1,400万ドルとなり、中国の対米追加関税による影響が顕著にみられた。

一方で、医薬品および医薬用品(第30類)が2.2倍の13億2,500万ドルと急増し、電気機器(第85類)が23.9%増の36億8,800万ドルとなった。

輸出減少に寄与した品目を、より詳細にHTSコード10桁でみると、鉱物性燃料の中では、石油および歴青油が前年同期比79.2%減、プロパンが93.9%減、天然ガス83.0%減などの減少が目立った(添付資料の表3参照)。石油および歴青油は中国の対米追加関税の対象には含まれていないが、中国にとって原油の輸入は、米国のメキシコ湾岸から輸入するよりも、中東から輸入する方が輸送コストは低く(2019年1月8日記事参照)、米国からの調達を減らす動きが続いている。また、報復関税第1弾の対象である大豆が29.2%減の16億9,600万ドルとなり、穀物の中では、同じく第1弾対象のグレインソルガムが前年同期の4億3,500万ドルから100.0%減の3万ドルに激減し、対中輸出はほぼストップした。

主要品目で、中国に代わり輸出が増加している国・地域をみると、日本、スペイン、メキシコ、韓国、台湾、オランダ、インドなどが挙がっている。品目ごとに増加した国・地域を寄与度が高い順でみると、石油および歴青油では韓国が4.2倍、インドが8.5倍、オランダが3倍、大豆ではメキシコが34.2%増、アルゼンチンとポルトガルは2018年第1四半期には輸出実績がなく、2019年第1四半期はそれぞれ7,102万ドル、5,615万ドルとなった。グレインソルガムではメキシコが12.2倍、日本が2.2倍、スペインは前年同期の輸出実績0から5,461万ドルとなった。

一方、輸出増加に寄与した品目をみると、追加関税対象に含まれていないプロセッサーおよびコントローラー、免疫産品がそれぞれ前年同期比2.1倍、15.4倍と拡大した。また、中国政府が2019年1月以降、第87類の自動車・自動車部品関連品の追加関税率引き上げを停止している(2019年4月2日記事参照)電気自動車は97.3%増とほぼ倍増し、乗用車(排気量1500cc超~3000cc以下)も2.4倍になった。

(中溝丘、野口真緒)

(米国、中国)

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