USTR、USMCAの行政措置声明草案を議会に提出

(米国、メキシコ、カナダ)

米州課

2019年05月31日

米国通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は5月30日、2015年大統領貿易促進権限(TPA)法にのっとり、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA)実施に係る行政措置声明(Statement of Administrative Action)の草案を議会に提出した。草案の提出により、30日後の6月29日以降であれば、USMCA実施法案の議会への提出が可能になる。ライトハイザー代表は民主党のナンシー・ペロシ下院議長や共和党のケビン・マッカーシー下院少数党院内総務らに送った書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、USMCAは米国の通商政策のゴールドスタンダードであり、米国の競争力のあるデジタル貿易や知的財産、サービス分野などの条項の現代化とともに、米国の企業、労働者、農家に公平な競争環境を作り出す点で、協定はメキシコとカナダとの貿易関係の抜本的なリバランスを示している、と指摘した。また、メキシコが5月1日に労働法改正を公布し、団結権と団体交渉権を強化したことや(2019年5月7日記事参照)、米国、カナダ、メキシコの3カ国が5月20日に鉄鋼・アルミの追加関税と報復関税を撤廃(2019年5月21日記事参照)し、カナダとメキシコが協定の正式な批准プロセスに入ったことを挙げて、「米国も当事国として責任を果たす時だ」と述べた。

行政措置声明の草案提出を受けて、ペロシ下院議長は声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、USMCAが米国の労働者や農民に利益をもたらすことをライトハイザー通商代表と確認する作業を終える前に草案を提出したのは前向きな手段ではなく、NAFTA改正の必要性については合意しているが、労働基準や環境保護などにおいて「より厳格な執行規定が必要」と指摘した。

なお、トランプ大統領は同日、メキシコからの不法移民問題が解決するまでの間、6月10日からメキシコ製品に関税を賦課することを表明したが(2019年5月31日記事参照)、NBCニュース(5月31日)によると、ミック・マルバニー大統領首席補佐官代行は、メキシコへの関税賦課はUSMCA協定には影響しないと記者団に説明している。マルバニー氏は、「(USMCAとメキシコへの関税の)2つは全く関連がなく、メキシコへの関税は、貿易紛争によるものではなく、移民問題によるものだ」と述べた。

(中溝丘)

(米国、メキシコ、カナダ)

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