農民工人口の前年比伸び率、調査開始以来の最低に

(中国)

北京発

2019年05月22日

国家統計局は4月29日、「2018年農民工観測調査報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同報告によると、2018年の中国の農民工人口は前年比0.6%増の2億8,836万人だった(表参照)。伸び率は2017年より1.1ポイント鈍化し、2008年の調査開始以来の最低となった。

表 農民工人口の推移

農民工人口の増加率が鈍化した要因としては、農民工の「市民化」があるとみられる。2016年9月に国務院が「1億の非都市戸籍人口の転籍を推進する方案」を発表し、年間転籍1,300万人以上という目標を打ち出すなど、中国政府は過去数年、農民工などの都市戸籍への転籍を積極的に推進してきた。また、国家発展改革委員会が4月8日に発表した「2019年新型都市化建設の重点任務」には、一定規模の都市における農村からの移転制限の撤廃や定住条件の緩和など、農民工の転籍を加速させる内容が盛り込まれた(2019年4月16日記事参照)。

農民工の受け入れ地区別に前年比伸び率をみると、主な出稼ぎ地である東部が2017年の0.2%増から2018年は1.2%の減少に転じた。うち、広東省の珠江デルタは3.9%減の4,536万人となった。一方、中部、西部はそれぞれ、2.4%増、4.2%増だった。華南都市研究会会長を務める曁南大学の胡剛教授は「労働集約型産業が中西部に移転しつつあることや、中西部の地方政府の支援策によって地元での雇用が増加していることが、珠江デルタの農民工人口の伸びが鈍化した大きな要因になった」と指摘した(「華爾街見聞」5月4日)。

農民工の高齢化が進行

今回の報告によると、2018年の農民工の平均年齢が40.2歳になり、前年より0.5歳上昇した。農民工の年齢構成比をみると、41~50歳が全体の25.5%を占め最も多かった。また、51歳以上の構成比が前年より1.1ポイント高まり、22.4%となった。同年齢層は2014年以降、構成比が毎年拡大している。

農民工の業種別構成比をみると、第二次産業の構成比が49.1%と前年より2.4ポイント縮小したのに対し、第三次産業は50.5%と2.5ポイント拡大した。

中国社会科学院人口・労働経済研究所社会保障研究室の陳秋霖主任は「経済面からみると、農民工人口の減少は良いことだが、農民工の高齢化は将来の都市の発展にとっては大きな課題になる」と述べた(「華爾街見聞」5月4日)。

(趙薇)

(中国)

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