EUROFER、対米通商摩擦に伴う「鉄鋼危機」からの救済を要請

(EU、米国)

ブリュッセル発

2019年05月27日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は5月24日、トランプ政権による鉄鋼への追加関税措置に伴い、米国市場を失った余剰鉄鋼がEU市場に流入する現状(2018年6月7日記事参照)を「鉄鋼危機」と表現し、EUとしての救済措置発動を求めた。英国のブリティッシュ・スチールが経営破綻(2019年5月23日記事参照)するなど、欧州鉄鋼産業界では、先行き不透明感が急速に広がっている。

「鉄鋼危機」は10万人の雇用に影響

欧州鉄鋼連盟はこの問題について既に5月17日付で声明(2018年5月17日記事参照)を出し、欧州の鉄鋼産業の先行きに関わる不安要素が、設備稼働率の低下や生産調整などのかたちで顕在化していると訴えている。今回、「欧州議会選挙の今、あえて鉄鋼危機の事態打開に向けてEU政治家の対応を要請する」として、危機打開を再度強く求めた。

同連盟によると、欧州における製鉄所の閉鎖の動きは徐々に広がっており、全体で1万人を超える直接雇用が失われる危機に直面しているという。アクセル・エガート連盟会長は「鉄鋼産業のサプライチェーンの間接雇用まで含めると、最大で10万相当の雇用が失われる恐れがある」と危機感を募らせる。

また同会長は、2018年7月以降EUが発動している鉄鋼に関する緊急輸入制限(セーフガード)措置(2019年2月4日記事参照)について、「適切に機能していない」との認識を示し、「さらなる(鉄鋼)市場歪曲(わいきょく)を食い止める効果的なものにするため、早急に措置の見直しが必要」と指摘。同連盟として、欧州委員会やEU加盟国政府との緊急協議実施を模索中であることを明らかにした。

(前田篤穂)

(EU、米国)

ビジネス短信 4e98516d3b2b6eed