中国、米国の追加関税率引き上げへの対抗措置を取ると発表

(中国、米国)

北京発

2019年05月09日

米国通商代表部(USTR)は5月9日付の官報で、1974年通商法301条に基づく、中国からの輸入に対するリスト3〔対中輸入額2,000億ドル相当の5,745品目(米国関税率表の上位8桁、一部品目は部分的に対象)〕の追加関税率を、5月10日に現行の10%から25%に引き上げると正式に発表する方針を示した(2019年5月9日記事参照)。

これを受け、中国商務部は5月8日、「中国はこれに対し遺憾の意を表明する。米国が追加関税措置を実行に移すならば、中国は必要な対抗措置を取らざるを得ない」との談話を発表した。

「環球時報」は5月9日付の社説で、「中米は大部分の問題を解決したものの、最終的に幾つかの核心的な問題で合意に至らなかったことは非常に残念だ。それらの問題は、米国の特権的で正当でない要求であり、本来避けるべきものだった」とした上で、「中国は米国側のこれらの要求を受け入れない」と論評した。

中国側はこれまで、外商投資法の制定と同法施行までに関連法規を完備し、フェンタニル類物質を規制するなど、米国側の要求に沿ってきた(2019年3月20日記事2019年4月5日記事参照)。

4月26日には、習近平国家主席が「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムの基調演説で、外資の市場参入の領域をさらに広げること、強制的な技術移転を防止すること、商業機密の保護を改善し、知的財産権の侵害行為に対する厳格な法的処罰を行うことに加え、商品とサービスの輸入をさらに大幅に増加させること、自国の利益を図るために他国を害する通貨切り下げは行なわず、人民元レートを合理的でバランスの取れた水準とし安定を保つこと、政府による法治を強化し約束した国際合意を履行するメカニズムを確立すること、公平な競争の障害や市場歪曲(わいきょく)的な非合理な規定、補助金などを排除・整理することを表明し、米国側の要求に合致する改革の方針をあらためて強調していた。

一方で、中国政府の示した方針は、在中米国企業などが要求する水準とは隔たりがあり、十分に具体化されていないとの指摘もある。米国商工会議所と中国米国商会が1月に連名で発表した「米中貿易交渉の優先事項についての勧告」では、(1)公平性確保と市場開放のための構造問題の解決(市場歪曲的な産業政策や補助金)、(2)あらゆる方式の強制的技術移転の排除、(3)デジタル経済分野の規制改革を優先事項として掲げていた。

さらに、強制的な技術移転を防止するために改正すべき法規制として、中国製造2025などに関連した地方政府レベルのものも含む各種政策のリストを提示し、公平かつ効果的な実施のための独立した仲裁メカニズムの設立を要望したほか、補助金や国有企業、技術移転を含む米中間での合意をWTOなど多国間においても採用すべきとしている。

(藤原智生)

(中国、米国)

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