麻薬性鎮痛薬フェンタニル類物質の規制を強化、米中合意が背景に

(中国、米国)

北京発

2019年04月05日

中国の公安部、国家衛生健康委員会、国家薬品監督管理局は4月1日、「フェンタニル類物質を『非薬用類麻酔薬品および精神薬品規制品増補リスト』に追加することに関する公告」を共同で発表した。5月1日から施行する。

劉躍進・国家禁毒委員会副主任兼公安部テロ対策専門員は4月1日の記者会見で、「今回の公告は、中国政府が正式にフェンタニル類物質を全面的に規制したことを表す」と述べた。同公告が、国連が規制する21種類を上回る25種のフェンタニル類物質と2種類の前駆体を対象としていること、4カ月以内に関連の法定プロセスを完成させることも発表した。

今回の措置の背景には、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで2018年12月1日に行われた米中首脳会談の合意がある。会談後に中国外交部が発表した声明では、「両国首脳がフェンタニル類物質の規制を含む麻薬の取り締まりなどの協力に合意した」とした上で、「中国はフェンタニル類物質の全面的規制を行うことを決定した」と述べていた。

また、米国ホワイトハウスが2018年12月1日に発表した声明では、「習近平国家主席がフェンタニルを規制薬物として指定することに同意した。これはフェンタニルを米国に販売する者は中国の最高刑の対象になることを意味する」としており、米国は中国に対しフェンタニルの規制を強く要請していた。

米国では、フェンタニルを含むオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の乱用が社会問題になっており、トランプ大統領は2017年10月にこの問題に対処するため、「公衆衛生上の非常事態宣言」を発表し、対策を取ってきた。

今回の措置は、中国が米中合意に基づき、米国の要請に応えたかたちとなる。一方、中国は「米国におけるフェンタニル類物質の主要流入元は中国ではない」との姿勢を崩しておらず、今回の措置が米国の要求を満たすかは依然として不透明だ。

(藤原智生)

(中国、米国)

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