第1四半期GDP成長率は0.8%と減速、付加価値税引き上げとインフレ加速が影響

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年05月09日

ロシア経済発展省は4月18日、2019年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が減速し、前年同期比0.8%と発表した(表参照)。同省は要因について、付加価値税(VAT)引き上げ(18%→20%)とそれに伴う消費者物価の上昇を背景に、商取引が停滞したためと分析している。

表 ロシアの主要経済指標

鉱工業生産は前年同期比2.1%増だった。鉱業は、OPEC+の枠組みでの石油減産による影響がある一方、天然ガス生産が依然として高い成長率を維持した。製造業では、食品、木材、化学、建材などの分野が好調に推移した。1月に不調だった自動車・同部品、航空機などの輸送機器の生産が2月に復調した一方、3月は冶金(やきん)やコークス、石油製品といった主要セクターの減速が見られた。

小売売上高は1.8%増にとどまった。インフレの加速(前年同期比5.2%増)と実質賃金の伸びの鈍化(前年同期比0.4%増)が要因として挙げられるが、実質賃金の鈍化は、インフレと名目賃金の季節調整による影響のためだ。実質賃金の伸びの減速を受けて、実質可処分所得は前年同期比2.3%減となった。

大手金融機関ウラルシブのアレクセイ・デビャトフ主任エコノミストは「2019年末まで実質賃金と実質可処分所得の減少傾向は続く」と指摘。経済発展省による予測(2019年の実質賃金を1.1%増、実質可処分所得を1.0%増と想定)について、同氏は「実質賃金伸び率の予測は給与以外の所得の減少トレンドを十分に勘案したものではない」とし、実質可処分所得は0.8%増に下振れするとの見方を示した。

今後の経済見通しについて、IMFは2019年通年の実質GDP成長率を1.6%(2019年4月18日記事参照)、世界銀行は1.4%と予測。経済発展省が4月22日に発表した「2022年までの経済見通し」では、2020年のGDP成長率を1.5%以下、インフレ率はルーブル安とそれに伴う原材料費の上昇を背景に4.2%になるとみている。

(加峯あゆみ)

(ロシア)

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