2019年のCIS地域の実質GDP成長率は2.2%、IMFの経済見通し

(ロシア、CIS)

欧州ロシアCIS課

2019年04月18日

IMFは4月2日、世界経済見通しを発表したが、見通しにはCISの各国・地域に関する予測も含まれている(2019年4月11日記事参照)。CIS地域の2018年の実質GDP成長率は2.8%、2019年の予測値は2.2%、2020年2.3%としており、2019年の予測値は2018年10月時点の予測と比較してわずかに引き下げている(表参照)。

表 IMFによるロシアCIS諸国のGDP成長率見通し

IMFによると、CIS地域の成長率の下方修正は、原油安によるロシアの低成長に起因するものとしている。中長期的予測では2.4%で安定的に推移する見通しだ。要因として、原油価格の控えめな見通しとロシアの財政悪化を受け、同国の中期的な成長率が1.5%と低く見積もられていることを挙げている。

地域別みると、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバといった欧州部の3カ国については、2019年のGDP成長率予測がいずれも前年比0.5ポイント以上下回るとしている。中央アジアおよびコーカサス地域(注)はほぼ横ばいとみており、アゼルバイジャンは資源価格下落からの回復により前年比2.0ポイント増の3.4%、カザフスタンは油価下落と原油生産制限を背景に3.2%(0.9ポイント減)と予測している。

ロシアの2018年の実質GDP成長率は2.3%で、2019年の予測値は1.6%、2020年は1.7%とみている。2019年の予測値は2018年10月時点より0.2ポイント引き下げた。IMFは、ロシア経済の持続的成長には、引き締め気味にある金融政策の見直しと、与信部門の効率性向上に向けた改善が必要とした。加えて、私有財産権の保護、労働市場の改革、インフラへの投資を継続して行うことが民間投資と生産性向上を促進し、先進国レベルまでの所得向上につながるだろう、と指摘している。

世界銀行も4月に2019年のロシアの実質GDP成長率予測を1月時点の1.5%から1.4%に下方修正している。世界銀行はロシアの低成長のリスクとして、欧米の対ロ制裁の強化、金融市場の悪化、急激な油価下落を挙げている。信用格付機関エクスペルト・エルエーのアントン・タバフ主任エコノミストは「ロシア経済は今後、油価以上に、税負担の増加と国内需要の低迷がGDP成長率に影響を与えることになろう」と述べている(「ニュース・ルー」4月5日)。

(注)ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア。

(加峯あゆみ)

(ロシア、CIS)

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