日本とイタリア産鉄鋼厚中板のAD調査でクロ判定

(メキシコ、日本、イタリア)

メキシコ発

2019年05月07日

メキシコ経済省は4月30日、2017年11月に開始したイタリアと日本を原産国とする鉄鋼の厚中板などに関するアンチダンピング(AD)調査(2018年12月21日記事参照)の最終決定文書を官報公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

経済省国際通商措置ユニット(UPCI)の決定文書によると、2016年5月1日~2017年4月30日の調査期間に、イタリアと日本から不当に低い価格で厚中板などの輸入が行われ、メキシコ国内の同種産品の生産に悪影響をもたらしたことを示す十分な要素が存在するとし、1キログラム当たりでイタリア産に0.023ドル、日本産に0.236ドルのAD税を課税するとした。適用は5月1日から5年間。なお、イタリア産でもマルセガリア・プレーツ(Marcegaglia Plates)の厚中板などはダンピングが行われなかったとし、AD税の課税はない。

メキシコの輸入者と日本の輸出者は、メキシコ国内の厚中板の生産者が実質的に調査申請者であるアルトス・オルノス・デ・メヒコ(AHMSA)の1社しかなく、AD税が課税されると同社の独占的な立場が強まり市場の競争環境が悪化すると主張し、仮にAD税を課税する場合でもダンピングマージン以下の税率とするよう求めていた。しかし、経済省はAD税の課税がメキシコ市場への厚中板などの供給量を減少させることはなく、ダンピングマージン以下の課税では、歪曲(わいきょく)された市場価格を是正し、国内産業への悪影響を排除するには不十分とした。また、中国や韓国における鉄鋼の過剰生産、米国の通商拡大法232条に基づく鉄鋼への追加関税措置が続いている状況下では、イタリアと日本の厚中板がメキシコ市場に流入して国内産業にさらなる打撃を与える可能性を懸念し、AD課税を決定したとしている。

AHMSAが生産できない厚中板は対象外

決定文書によると、AHMSAが生産できない以下の厚中板については、AD税の課税対象から除外された。これらの鋼材については、AD税の対象HSコード(2017年11月24日記事参照)に含まれていても、対象外であることを証明すればAD税は課税されない。

  1. 幅が120インチ(3,048ミリ、1インチ=25.4ミリ)を超える厚中板
  2. 幅が120インチ以下の厚中板だが、API 5LB X-70の規格に基づき、本決定文書の106.のb)に記載されている化学構成および試験結果を有するもの
  3. 耐摩耗性などを施すための熱処理(焼き入れ、焼き戻し)がされたもの
  4. 焼きならしがされたもので厚さが2インチを超えるもの
  5. 厚さが2インチを超えるもので、真空脱ガスプロセスの証明書がある、あるいは強度や耐久性などに関する十分な内部品質基準を満たしていることの証明があるもの

(中畑貴雄)

(メキシコ、日本、イタリア)

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