日本製とイタリア製厚中板などのAD調査を開始

(メキシコ)

メキシコ発

2017年11月24日

経済省は11月14日、日本製およびイタリア製の厚中板、合金鋼フラットロール製品の一部についてアンチダンピング(AD)調査を開始すると官報公示した。日本の輸出業者やメキシコ側の輸入業者など利害関係者は、2018年1月10日までに所定のフォーマットで意見書を作成し、経済省に必要な情報を提出する必要がある。

国内鉄鋼大手が調査を請求

AD調査の申請は、メキシコ鉄鋼大手のアルトス・オルノス・デ・メヒコ(Altos Hornos de Mexico:AHMSA)によって7月19日に行われた。2016年5月から2017年4月までの間、日本製およびイタリア製の厚中板、合金鋼フラットロール製品が不当に安い価格でメキシコ市場に流入し、国内産業が打撃を受けたと主張している。調査対象期間は2016年5月1日~2017年4月30日、国内産業の損害分析の期間は2014年5月1日~2017年4月30日としている。

対象となっている製品はHSコード(メキシコ側8桁)の、7208.51.01、7208.51.02、7208.51.03、7208.52.01、7225.40.99に分類されるもの。厚中板は、土木・建築・橋・産業機械、石油タンク、海洋構造物などの一般および溶接構造用の鋼板をはじめ、造船、ボイラー・圧力容器、ラインパイプなどに幅広く使用される(日本鉄鋼連盟ウェブサイト)。今回は、その中でもガスパイプラインなどに使用されるラインパイプ向け鋼材の数量が増加したものとみられる。

表1、2は対象品目の中でも取扱量が多い2品目について輸入相手国別にみたもので、合金鋼フラットロール(その他、HS7225.40.99)については2015年から2016年にかけ日本製の輸入が急増し、2017年に入っても依然として多い。イタリア製はその他に入るほど少量だ。

表1 合金鋼フラットロールの輸入量(単位:キロ、%、△はマイナス値)
国名 2014年 2015年 2016年 前年比 2017年(1~8月)
日本 182,863 11,863,421 201,076,567 1,594.9 205,815,505
米国 8,340,301 7,275,753 9,407,634 29.3 6,475,193
中国 2,148,686 65,655,850 5,821,447 △ 91.1 3,143,331
スウェーデン 325,638 2,982,659 3,582,872 20.1 1,015,906
ドイツ 1,198,441 793,977 829,487 4.5 579,524
フィンランド 843,456 365,791 386,567 5.7 401,830
カナダ 3,132,467 1,456,963 318,587 △ 78.1 93,153
フランス 319,500 1,513,488 286,934 △ 81.0 13,465
オーストリア 152,654 200,440 187,761 △ 6.3 38,647
ベルギー 79,458 73,809 127,763 73.1 26,982
ブラジル 12,303 590 28,410 4,715.3 0
オランダ 0 65,236 21,628 △ 66.9 215
スペイン 51,986 16,852 21,201 25.8 11,600
韓国 189,115 808,804 10,493 △ 98.7 117,967
その他 209,569 306,598 29,960 - 20,541
全世界 17,186,437 93,380,231 222,137,311 137.9 217,753,859

(出所)経済省貿易統計

一方、厚中板(非合金、HS7208.51.01)については、日本製品は調査対象期間外の2015年に輸入量の増加がみられるが、2016年には減少しており、2017年8月までも前年を下回っている。しかしイタリア製品は2016年に急増している。

表2 厚中板の輸入量(単位:キロ、%、△はマイナス値)
国名 2014年 2015年 2016年 前年比 2017年(1~8月)
米国 301,868,722 283,263,204 202,510,454 △ 28.5 93,354,413
日本 29,139,106 101,395,745 67,277,787 △ 33.7 14,340,179
イタリア 379,219 360,944 40,555,793 11,136.0 25,235,479
韓国 49,077,976 87,640,903 11,330,439 △ 87.1 16,240,433
カナダ 5,506,644 9,731,193 2,266,125 △ 76.7 268,303
フランス 862,633 625,758 479,960 △ 23.3 229,092
オーストリア 322,907 345,165 297,343 △ 13.9 184,917
中国 285,717 583,420 275,653 △ 52.8 387,947
ドイツ 992,369 1,977,384 236,895 △ 88.0 116,280
ベルギー 119,152 8,378 52,810 530.3 0
その他 20,388,684 11,061,303 165,064 - 167,690
全世界 408,943,129 496,993,397 325,448,323 △ 34.5 150,524,733

(出所)経済省貿易統計

合金鋼フラットロールのメキシコへの輸入価格は、2015年から2016年にかけて日本製は全世界平均を下回るものの、前年比の下げ幅は他の主要国よりも小さい(表3参照)。むしろ2014年から2015年にかけての方が下げ幅を大きくしている。また、2017年1月から8月までをみると、価格は上げに転じているものの全世界平均は下回る。

表3 合金鋼フラットロールの原産国別平均輸入価格(単位:ドル/トン、%、△はマイナス値)
国名 2014年 2015年 2016年 前年比 2017年(1~8月)
全世界平均 1,960 760 550 △ 27.6 560
日本 1,920 530 470 △ 11.3 510
米国 2,020 2,040 1,680 △ 17.7 1,670
中国 2,020 580 1,000 72.4 1,090
スウェーデン 2,880 1,010 740 △ 26.7 720
ドイツ 2,670 2,370 1,430 △ 39.7 1,840
フィンランド 1,770 2,290 2,000 △ 12.7 1,830
カナダ 1,150 1,090 1,200 10.1 940

(出所)経済省貿易統計

厚中板についても2015年から2016年にかけて日本製は全世界平均を下回る。2017年1月から8月までをみると上昇に転じており、2015年の水準に戻っている(表4参照)。イタリア製は2015年から2016年にかけ、半分に価格を下げている。

表4 厚中板の原産国別平均輸入価格(単位:ドル/トン、%、△はマイナス値)
国名 2014年 2015年 2016年 前年比 2017年(1~8月)
全世界 1,010 810 680 △ 16.1 750
米国 1,100 960 770 △ 19.8 840
日本 690 570 480 △ 15.8 570
イタリア 1,370 1,130 560 △ 50.4 650
韓国 720 610 470 △ 23.0 520
カナダ 1,230 950 810 △ 14.7 990
オーストリア 1,510 1,290 1,380 7.0 1,480
フランス 1,060 860 850 △ 1.2 1,060
ドイツ 1,140 1,120 1,160 3.6 1,240
中国 990 890 670 △ 24.7 690

(出所)経済省貿易統計

利害関係者の情報提出期限は2018年1月10日

WTOのAD協定第6.8条は、利害関係を有する者が妥当な期間内に必要な情報の入手を許さず、もしくは提供しない場合には、「知ることができた事実(Facts Available)」に基づいて決定を行うことができると規定している。こうした情報提供がなされない場合は、AHMSAの主張に沿った決定がなされる可能性がある。

貿易法第53条ならびに11月14日付官報公示第229項に基づき、利害関係者が自らの見解や根拠となる情報を経済省に提出する期限は、公示翌日より28営業日となっている。ただし、営業日を示すカレンダー(教育省が決定する休暇カレンダー)には、年末年始休暇が入るので、実際の期限は2018年1月10日午後2時(現地時間)までとなる。

(中島伸浩)

(メキシコ)

ビジネス短信 41f9d35e49582d08