爆破テロ事件、日系企業の事業活動に深刻な影響

(スリランカ)

コロンボ発、アジア大洋州課

2019年04月26日

4月21日に発生した同時爆破テロ事件の余波が続いている。スリランカ政府は4月24日、道沿いや駐車場に駐車する自動車やバイクに、運転手や所有者の携帯番号・氏名を記載した紙を見えるように置くことを義務付ける通達を出した。25日には、ドローンや無人飛行機(ラジコンを含む)の飛行を禁止した。また、犯人逮捕を迅速に進めるため、26日以降、ブルカ(イスラム教の女性が羽織る目の部分だけ出して体全体を覆うべール)の着用が禁止になるなどの措置も取られている。

21日から続くインターネット接続やSNSの利用制限(2019年4月24日記事参照)は25日午後に一時的に解除されたものの、25日深夜には再び制限された。25日朝にはコロンボ市内の複数箇所で交通が事前の通知なく遮断され、軍と警察が不審者や不審車両の捜査を行うなど、物々しい雰囲気が続いている。ただ、軍や警官の人手不足から市内全域に警備が行き届いておらず、あるオフィスビルでは「エントランスのセキュリティーチェックが、民間警備員による非常に簡易なもので心もとない」とする声もあった。

進出日系企業にヒアリング、生産や観光に影響

テロ事件を受け、ジェトロが日系企業へのヒアリングなどを通じて影響を調べた。日系の製造業関係者は「コロンボの国際空港ならびに港湾は通常どおり稼働しているが、輸出入貨物のセキュリティーチェックが厳格化されている」と口をそろえた。さらに、港湾施設ではエントランスなどで海軍の検問があり、乗員を全員下車させて、荷物検査やエンジンルームのチェックなどが行われているもようで、「通常より早めに製品を出荷するなど、対応を迫られている」とした。また、連日の夜間外出禁止令で従業員の出社に影響が出るなど、各社の操業が停滞し、納期の遅れも発生している。企業の中には「今後スリランカでの生産をリスクと捉える企業が増加し、受注済み契約のキャンセルや新規契約が伸び悩む可能性がある」とする声もあった。

さらに、観光業への影響は甚大だ。市場が小規模のスリランカにとっては、外国人旅行客によるインバウンド需要の減少は、内需型企業には大きな痛手となる。観光客相手にビジネスする企業の関係者は「ゴールデンウイーク中の予約の8割がキャンセルとなった。今年の夏休みまでは客足が遠のくだろう」と漏らした。警察や軍隊による現場検証などの影響で、コロンボ市内のホテルの一部は連日、営業を見合わせているもようだ。

(井上元太、渡邉敬士)

(スリランカ)

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