東海岸鉄道の工事再開が決定、総工費圧縮を実現

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年04月24日

マレーシア首相府は4月12日、マレーシア鉄道公社と中国交通建設(CCCC)の間で、東海岸鉄道(ECRL)について補足契約を締結し、ECRL計画を続行すると発表した。ECRLは、東海岸のクランタン州のペンカランクボールから、パハン州のクアンタン港を経由し、西海岸のクラン港まで約680キロ(当初の予定)でつなぐ鉄道計画で、2017年8月に着工式が行われた。しかし、2018年5月の政権交代後、マハティール新政権が選挙公約として「大型インフラ計画の見直し」を進め、ECRLもその対象となっていた。

二転三転したECRLの計画見直し

ECRLの見直しは、二転三転した。2018年7月3日には工事の一時休止命令が出され、8月21日にマハティール首相が中国を訪問し、ECRLの計画中止を発表した。ところが、8月24日に「ECRLは依然、交渉が必要」として、中止から一転して延期となった(2018年8月17日記事参照)。その後も、中国との総工費の見直しを含めた再交渉が続けられ、今回の補足契約締結に至った。

総工費を3分の2まで圧縮

補足契約では、当初の総工費を655億リンギ(約1兆7,685億円、1リンギ=約27円)から440億リンギへ約3分の2に圧縮、ルートが一部変更され、総距離は688キロから648キロに短縮されることとなった。実際の工事再開は2019年5月で、完成は2026年12月の見込みだ。

建設完了後の運営およびメンテナンスについて、当初はマレーシア鉄道公社単独で行う予定だったが、政府はCCCCと折半出資による合弁会社を設立することに合意した。総工費の圧縮とともに、契約当初よりもマレーシアのコスト負担が軽減されることになる。

再開への評価で見方分かれる

米国のロングアイランド大学のパノス・モウドウコウタス経済学部長は、受注済み案件に関して、中国を交渉のテーブルに戻し、コスト削減を実現したことについて、「スリランカ、パキスタン、フィリピンがやらなかったことを、マレーシアは大胆にも実行した」とし、ECRLの補足契約締結は、今後の中国の海外でのインフラ政策に影響を与えるとみる(国営「ベルナマ通信」4月16日)。他方、アムインベストメント銀行のジョシュア・ング氏は、土木工事における地場企業の参画率を30%から40%に引き上げるとする点について、「中国が実際に地場企業に下請け業務を委託するかどうかは懐疑的」とし、国内経済に与え得る好影響は限定的だと分析する(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙4月15日)。

(田中麻理)

(マレーシア)

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