高速鉄道やMRT3号線計画、「中止」一転「延期」に

(マレーシア)

クアラルンプール発

2018年08月17日

マレーシア政府は、5月末にいったん計画を中止するとしたクアラルンプール~シンガポール間高速鉄道(HSR)、大量輸送システム(MRT)3号線について(2018年6月8日記事参照)、「中止」ではなく「延期」と発表するなど、計画実現の可能性を示唆した。計画中止は、選挙公約の「大型インフラプロジェクトの見直し」に基づいたもので、マハティール政権は1兆リンギ(約27兆円、1リンギ=約27円)を超える政府債務の削減を目指している。

マハティール首相はHSR計画中止を発表した2週間後の6月11日、日本滞在中に「HSRは中止ではなく、延期」と発言した。同首相は7月19日、「マレー半島部のHSRの将来的な必要性を考慮しつつも、現状の国家財政では当初計画の実行は困難」として、シンガポール政府に計画延期の交渉を申し出ることを発表した(「ザ・スター」紙7月20日)。8月中にも、モハマド・アズミン・アリ経済相がシンガポールを訪問する予定だ。

MRT3号線については、アンソニー・ローク運輸相が7月31日、「財政の回復後、MRT3号線を優先プロジェクトの1つにする」と発表(「ザ・サン」紙7月31日)。公共交通機関の利用促進のため、政府は既存のバス・鉄道の改良と修繕を当面の優先インフラ整備案件とすることを明らかにした。

ECRLは中国との再交渉を念頭に工事を休止

「一帯一路」構想のプロジェクトの1つで、中国からのローンで整備を進める予定だった東海岸高速鉄道(ECRL)については、マレーシア政府が7月3日に工事の休止命令を下した。同日時点で、688キロに及ぶ同鉄道の進捗は約15%だった。政府は同プロジェクトに係る契約の再交渉を求めており、8月17日から予定されているマハティール首相の中国訪問時に議論される見込みだ(「ザ・サン」紙7月28日)。

東マレーシアのサバ州とサラワク州を結ぶパン・ボルネオ高速道路計画については、バル・ビアン公共事業相が8月4日、「計画どおり進めることを保証する」と発表した(「ボルネオ・ポスト」紙8月6日)。建設費用については、当初計画の290億リンギから削減を検討する。

(田中麻理)

(マレーシア)

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