対ブラジル自動車協定の交渉は継続、原産地規則の改定を望む

(メキシコ、ブラジル、メルコスール)

メキシコ発

2019年04月02日

メキシコ経済省や自動車部品工業会(INA)によると、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)経済補完協定(ACE)第55号付属書II(通称「メキシコ-ブラジル自動車協定」)の第7次追加議定書の交渉は、第5次および第6次追加議定書が定める3月18日の交渉期限に間に合わず、3月19日以降、当面の間は両追加議定書に規定されている以下の内容に変更される。

  1. 完成車の無関税輸入割当は撤廃され、自由貿易に戻る。
  2. 完成車および直接輸出される自動車部品の域内原産割合(RVC)の閾値(いきち)は35%から40%に引き上げ。
  3. 第6次追加議定書第2条が定めていた特定自動車部品のRVC軽減措置(2017年1月16日記事参照)は撤廃され、全て40%に統一。
表 メキシコ-ブラジル自動車協定の原産地規則

INAはタリフジャンプの復活を求める

無関税輸入割当の撤廃は、完成車をブラジルに輸出する企業にとっては追い風となるが、原産地規則の厳格化は、自動車部品をブラジルに輸出する企業にとっては厳しい内容だ。特に日系完成車メーカー(OEM)のサプライチェーンは、ブラジルよりもメキシコの方が充実していることもあり、日産やホンダのサプライヤーを中心にメキシコからブラジルに自動車部品を輸出する企業は多い。鋼材や樹脂などの素材の現地調達が難しいメキシコにおいて、積上げ方式(注1)で40%以上というRVCは高いハードルだ。

INAは3月21日付会員向けメール配信の中で、(3)の軽減措置が維持できなかったことに遺憾の意を表し、交渉中の第7次追加議定書では、RVCの計算公式の変更に加え、アルゼンチン向けと同様、相手国に直接輸出される自動車部品の原産地規則に関税分類変更基準(通称:タリフジャンプ)(注2)の適用を認めさせるよう、経済省のルス・マリア・デ・ラ・モラ通商交渉担当次官に働き掛け、同次官の同意を得たとしている。

(注1)FOB取引価格に占める原産材料の価格で計算する。「材料」の価格しかRVCに算入できないため、人件費や製造経費などの付加価値が反映されない。光熱費や潤滑油などの間接材料の価格も原産付加価値に加えられない。

(注2)輸出する製品に用いられる非原産材料のHSコードが、製品のコードと指定された桁数で全て異なっていることをもって、原産品と判断する原産判定基準。

(中畑貴雄)

(メキシコ、ブラジル、メルコスール)

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