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対ブラジル自動車協定の原産地規則を暫定的に緩和-品目に応じて域内原産割合を引き下げ-

(メキシコ、ブラジル)

米州課

2017年01月16日

 メキシコ経済省は2016年12月28日、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)経済補完協定(ACE)第55号付属書II(通称:メキシコ-ブラジル自動車協定)の第6次改定議定書を官報公示し、即日適用した。同議定書は対ブラジル自動車部品貿易における特恵関税適用の条件となる原産地規則を緩和するもので、品目に応じて域内原産割合(RVC)が原則35%から10~30%に引き下げられる。ただし、2019年3月18日までの時限措置となる。

<2015年3月の改定で原産地規則の達成が困難に>

 メキシコ-ブラジル自動車協定の自動車部品に関する原産地規則は2015年3月19日に改定され、原則としてRVCが積み上げ方式の計算公式〔RVC(%)=原産材料価額÷FOB取引価額×100〕で35%以上とされた(表参照)。この改定以降は、関税分類変更基準(CTC、注)を適用して原産品と見なすことが不可能になったため、鋼材や樹脂など素材の輸入依存度が高いメキシコでは、プレス部品やプラスチック成型品など素材を加工した自動車部品の原産地規則の達成が非常に困難となっていた(2015年4月8日記事参照)。

表 メキシコ-ブラジル自動車協定の原産地規則

 構成部品の点数が少なく、輸入素材を加工する製造工程が中心の企業にとっては、上記公式でRVC35%を満たすことは不可能に近いため、メキシコ自動車部品工業会(INA)や外資系自動車部品メーカーは対ブラジル自動車協定の原産地規則を以前から問題視しており、メキシコ政府に働き掛けてブラジル政府との交渉を促し、今回の改定を実現させた。両国政府は2016年7月7日に合意に達し、第6次改定議定書に署名した。両国とも12月中に同議定書の公布を済ませ、12月28日に発効した。

 

<部材調達の現状に応じてRVCを引き下げ>

 第6次改定議定書は主に、第5次改定議定書の第7条と第8条を変更する内容になっている。

 

 第5次改定議定書の第7条はRVCが35%に達しない例外品目(カーオーディオ、ギアボックス、駆動軸・非駆動軸など)を定めたものだったが、これを廃止して2019年3月18日までの時限措置としてRVCが引き下げられる品目をあらためて規定した(第6次改定議定書第2条)。

 

 RVCが引き下げられる品目は合計44品目で、品目によってはRVCが10%まで引き下げられるものもあり、原産地規則の達成が以前よりは容易になる。全般的にみると、構成部品の点数が多いユニット系の部品のRVCは高めに設定されているが、ユニットに用いられる構成部品のRVCは10%、15%、18%と低く設定されている。具体的な対象品目と各品目のRVCについては、添付資料を参照のこと。

 

<2019年3月19日に計算公式の変更を予定>

 また、第5次改定議定書の第8条は、2017年3月18日までの時限措置としてRVCが引き下げられる品目を規定したものだったが、これを廃止して時限緩和措置としては第7条に統合し、第8条としては、2019年3月19日に自動車と自動車部品についてRVCの計算公式を新方式に変更することを規定した。新公式は明らかになっていないが、両国が2018年3月に交渉を開始すると規定している(第6次改定議定書第3条)。

 

 ジェトロが2016年8月にINAのオスカル・アルビン事務総長にヒアリングしたところ、INAとしてはRVCの計算公式の分子(原産材料価額)に労働コストなど材料費以外の製造コストを加えるよう求めているという。現状では、労働コストや光熱費、機械設備の減価償却費などの経費は全て非原産部分として計上することになっているが、明らかに域内で製造に投じたこれらの経費については原産部分に含めることをメキシコ側としては求めていくもようだ。

 

<非自動車部品の原産地規則にはCTCが適用可能>

 メキシコ-ブラジル自動車協定の自動車部品の原産地規則で理解しておくと有利になる事項として、同協定で特恵関税の対象となっていない素材(非自動車部品)の原産性の判断基準としては、改定前の原産地規則(ACE55号の原産地規則の大原則)が適用されるということがある。2015年3月19日の改定で原産地規則が厳格化されたのはACE55号付属書II第1条d)に規定されている自動車部品(ジェトロ「対象品目リスト」参照)で、自動車部品と見なされない素材の原産性の判断基準としては、(1)4桁レベルのCTC、(2)FOB価額に占める非原産材料の価額が50%以下、という従来の基準が適用できる。

 

 このため、CTCを適用して素材を原産と見なせないか検討することが重要だ。例えば、熱延鋼板から冷延鋼板への圧延工程、メッキ鋼板への表面処理工程は関税分類の変更を伴う(HS7208→HS7209あるいはHS7210)。また、熱延鋼板あるいは冷延鋼板で幅が60センチ以上のものを鉄鋼サービスセンター(コイルセンター)でスリット加工し、幅60センチ未満にする工程でもHSコードは変わる(HS7208あるいはHS7209→HS7211)。鋼板(HS72類)から鋼管(HS73類)への加工でもHSコードが変わる。メキシコには多くの日系コイルセンターが進出しており、昨今は電気溶接鋼管のメーカーも複数操業している。これらの進出企業からメキシコで一定程度加工された鋼材や鋼管を調達することにより、元の素材が日本産であっても、ACE55号の原産材料と見なすことも可能だろう。

 

 また、輸出製品の製造工程で自動車部品と見なされない構成部品を内製している場合には、その内製部品を「中間材料」(2012年3月23日記事参照)に指定することでRVCの計算を有利にすることも可能だ。例えば、ベアリングメーカーがボールベアリング用のリング(HS8482.99)を内製している場合、同リングはメキシコ-ブラジル自動車協定の第1条d)で自動車部品として規定されていない。従って、リングの原産性の判断においてはCTCが使えるため、素材の特殊鋼が域外産であってもリングへの加工工程でHSコードが変わるため原産材料となり、中間材料に指定することでRVCの計算を有利にできる。

 

 これ以外に、わずかながらRVCの計算を有利にする方法として、輸出に商社を関与させる方法もある。ACE55号別添II(共通原産地規則)の第8条3項は、RVCの計算に用いる製品価額の基準をFOB価額と規定しているが、生産者が輸出者でない場合は輸出者が生産者から製品を受け取った地点での取引価額が適用される。つまり、輸出者が工場渡し(Ex-Work)価額で生産者から仕入れた場合は、製品価額に港までの輸送費が含まれないため、RVCの分母を小さくして計算を有利にすることが可能だ。

 

(注)輸出産品を生産するために用いる非原産材料の関税分類(HSコード)が輸出産品のHSコードと指定された桁数(上2桁、上4桁、上6桁)で異なっていれば、原産品と見なす原産性判断基準。

 

(中畑貴雄)

(メキシコ、ブラジル)

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