食品小売り大手、消費不調で2018年通期決算は減益に

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月01日

ロシアの食品小売り大手の2018年決算(国際会計基準)が出そろった(表参照)。国民所得が低迷して消費が伸び悩む中、各社とも苦戦を強いられている。

表 食品小売り大手の財務業績(国際会計基準)

業界最大手のX5リテール・グループは売り上げを前年比で18.3%増と伸ばしたものの、純利益は同8.8%減だった。減益要因として、人件費や店舗賃料、水道光熱費などのコスト増を挙げている。イーゴリ・シェフテルマン最高経営責任者(CEO)は、小売業界では近年、消費需要の低下と競争激化に見舞われていると説明し、「店舗面積当たりの売り上げ拡大による成長維持が主要課題だ」と強調する(「ベドモスチ」紙3月20日)。

X5に次ぐ大手マグニトも、2018年通期決算は同じく増収減益となった。第4四半期(10~12月)では既存店ベースの売り上げがプラス0.6%と2年ぶりの拡大に転じたものの、伸び率は競合するX5リテール・グループのプラス3.7%に及ばない。

連邦国家統計局のまとめでは、国内の小売売上高が上昇する一方で、国民の実質可処分所得は5年連続でマイナス推移(注)となっている(図参照)。マーケティング会社ベタ・グループのドミトリー・ジャルスキー代表は「(実質所得の伸び悩みが)小売業界の成長を妨げることになるだろう」と予測する(RBK2月7日)。

図 実質可処分所得と小売売上高(注)の変化率(前年比)

所得減少による消費不調のほかに、大規模店舗の経営改善も大手小売業の懸案事項とされる。X5リテール・グループのシェフテルマンCEOによると、以前の消費者はハイパーマーケットで買いだめをする傾向にあったが、現在は住宅地内に増加している小型店で必要に応じ購入できる新鮮な食品が好まれるという。さらに、ECサイトでの非食品調達の普及も、大型店舗へ足が遠のく要因となっている。このため、同社では、店舗面積を縮小したスーパーマーケットへの形態変更や、非食品小売り他社への実質的な移管、インターネット販売の促進など、さまざまな試みを予定している。(「ベドモスチ」紙3月6日)

一方のマグニトは、2018年に株主構造や経営陣の刷新、大型店形態の見直しなどを行い、高収益率の薬品販売部門を強化するため、ドラッグストアグループの買収取引(2018年11月9日記事参照)を完了。2018年9月に発表した発展新戦略も実施中で、その効果について、オリガ・ナウモワCEOは「2019年末から2020年に明らかとなるだろう」と予想している(同社プレスリリース3月15日)。

(注)小売売上高の変化率は、物価変動などを考慮した可比価格に基づかない金額ベースでの比較。2017年および2018年通期の実質可処分所得は、2017年1月の年金一時金5,000ルーブル(約8,500円、1ルーブル=約1.7円)を含む。

(市谷恵子)

(ロシア)

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