ノー・ディールに伴う中小企業への影響に警戒感

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年04月08日

欧州の食品・飲料事業者の産業団体フード・ドリンク・ヨーロッパは4月5日、欧州委員会のユルキ・カタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)がこの前日に明らかにした、英国のEU離脱(ブレグジット)にかかる食品安全分野での合意なき離脱(ノー・ディール)対策準備(2019年4月5日記事参照)への支持を表明した。ノー・ディールによって直接的な影響を受ける欧州の食品・飲料産業として、特にEU側の中小企業の輸出ビジネスの混乱に警戒感を強める。

緊急対策があってもなお、中小企業には課題山積

フード・ドリンク・ヨーロッパによれば、英国の食品・飲料のEU27カ国からの輸入額は毎年、約330億ユーロに達しているが、英国がEU単一市場や関税同盟から離脱した場合、現在の通商関係を継続することは極めて困難な状況に陥るという。このため、カタイネン副委員長が提唱している「暫定的にEU・英国の食品・飲料や動物の流通に関わる規制を緩和する方針」を、通商関係の断絶を最小限に抑える手法として、フード・ドリンク・ヨーロッパは評価する。

同団体がブレグジットに対する警戒感を強める背景には、EU域内でも特に中小企業には(相対的に輸出手続きが簡易なEU加盟国向けにしか輸出した経験がない企業が多いため)ブレグジット以降、英国が初めてのEU域外・第三国との輸出取引となるケースが想定されることがある。特に、経営リソースが限られる中小企業の場合、さまざまな財政面での負担や輸出実務に関わるノウハウを持つ人材確保などの課題が山積しているとみる。

フード・ドリンク・ヨーロッパはこうした手続き面での欧州委の課題対策を評価する一方、ノー・ディールに伴う深刻なビジネスの断絶で、EU側の雇用が失われるリスクも想定されるとして、こうした問題への対策・支援もEUに求めている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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