欧州委、「医療」「食品安全」分野でもノー・ディール対策
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年04月05日
欧州委員会のユルキ・カタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)は4月4日、英国のEU離脱(ブレグジット)問題をめぐる最近の状況を踏まえ、「合意なき離脱(ノー・ディール)になる可能性が極めて高い」との認識を示し、同副委員長が所管する「医療」「食品安全」分野でも、ノー・ディールを含めた全てのシナリオに対応できる準備を進めていると述べた。
アイルランド、フランスなどで2,000人超の税関職員を採用
欧州製薬団体連合会(EFPIA)は3月21日付の声明で、ブレグジットに伴う混乱で医療現場や患者に医薬品などの供給が遅延・断絶する事態を憂慮し、EUや加盟国に対して、「英国で品質試験を受けた医薬品」や「英国政府から認定を受けた第三者認証機関(NB)の認証(CEマーク)に基づく医療機器」のEUにおける使用を暫定的に認めるべきと提言している。
これに対して、カタイネン副委員長は、医薬品については過去2年間、欧州医薬品庁(EMA)やEU加盟国と協議を重ね、ブレグジットを見据えた準備を進めてきたとし、「(ノー・ディールの場合の)医薬品供給中断のリスクを抑えるため、産業界が必要な措置を続け、EU加盟国は患者を守ることを優先してEU法を援用することが重要」と述べた。医療機器については「英国で発行された全ての認証を離脱日前までにEU側に移管するよう、英国とEU27カ国と密に連携している」と指摘。それでも医療機器の供給に問題がある場合、加盟国はEUが認証していない医療機器の暫定的な流通を既存の法制度が定める特例として許可する場合もあり得るとしている。
食品安全について、カタイネン副委員長は「英国との貿易については、(離脱後)国境での通関検査が導入されるため、検査所設置も迅速に進める」「大きな影響が想定されるアイルランド、フランス、ベルギー、オランダ、デンマークでは既に2,000人を超える係官を採用、EU加盟国は通関業務や安全検査に立ち会う」としている。ただ、英国が新たな法制度を整備し、EUの求める食品安全基準を満たすことを条件に、英国の食品や動物の流通を認める対策を急いでいると述べた。一例として、欧州委が英国をEU食品安全基準を満たす第三国と見なし、輸出許可対象国リストに掲載する必要があるとしている。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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