ドイツの対ロシア投資、大型案件が寄与し回復基調続く

(ロシア、ドイツ)

モスクワ発

2019年04月30日

独ロ商工会議所(注1)のプレスリリース(4月15日)によると、2018年のドイツの対ロシア直接投資額は、リーマン・ショックがあった2008年以来の最高額を記録した。ドイツ連邦銀行によると、2018年の対ロシア直接投資額は約32億6,000万ユーロ(前年比15.6%増)だった(図参照)。

図 ドイツの対ロシア直接投資額推移(ネット、フロー、実行ベース)

独ロ商工会議所のマティアス・シェップ会頭は「ノード・ストリーム2(注2)のような大型プロジェクトが、中小企業をはじめとするドイツ企業のロシア市場参入への可能性を切り開く」と述べ、中小企業による今後のロシア・ビジネスの拡大を期待している(独ロ商工会議所のプレスリリース4月15日)。

バルト海沖で建設が進められているノード・ストリーム2へのドイツからの投資額は累計90億ユーロと推定され、ドイツのエネルギー大手ユニパーや石油・ガス大手ウィンターシャルは9億5,000万ユーロ出資している。

自動車分野では、ダイムラーがロシア政府との特別投資契約(注3)を締結し、4月にモスクワ州で「メルセデス・ベンツEクラス」セダンを生産する工場を開所した(2019年4月8日記事参照)。投資額は約2億5,000万ユーロ。フォルクスワーゲン(VW)はカルーガ州に工場を持つほか、ロシア商用車製造大手ガズ・グループのニジュニ・ノブゴロド市の工場でも生産委託をし、これまで5億ユーロ以上投資している。VWも特別投資契約の意思を表明しており(2019年4月16日記事参照)、ロシアでの現地生産を拡充させる意向だ。

独ロ商工会議所はジェトロのインタビュー(4月24日)に対し、「ユーロ高・ルーブル安の傾向や、低価格のアジア製品との競合などにより、ロシアに製造拠点を持たない企業は苦戦している一方、ロシアのビジネス環境が期待するほど良くないことから、現状は中小企業の対ロ投資はあまり伸びていない印象だ」と述べた。また、ビジネス環境の阻害要因として、ルーブル為替レートの変動と欧米の対ロ制裁動向を挙げた。

(注1)ロシア最大の外国企業団体。会員企業数は現在874社。

(注2)ロシアからバルト海底を経てドイツまでを結ぶパイプライン「ノード・ストリーム」(年間送ガス能力は550億立方メートル)と同じルート・同じ規模の敷設が計画されているパイプライン。ドイツのエネルギー大手ユニパーや石油・ガス大手ウィンターシャル、フランスのガス大手エンジー、オーストリアの石油大手OMV、英国・オランダ系石油メジャーのシェルが開発に関与している。

(注3)ロシア政府(産業商務省)と企業との間での投資契約。製造投資(設備更新を含む)、特定期間内・割合での現地調達率達成などを条件に、連邦・地方政府、市町村から投資企業へ税制優遇などの措置が提供される。

(戎佑一郎)

(ロシア、ドイツ)

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