総選挙で大敗したものの、連立交渉のカギを握る民主党

(タイ)

バンコク発

2019年04月10日

3月24日に行われたタイの総選挙において大敗したものの、一定の議席(55議席)を獲得する見通しの民主党は(投票結果は未公表、2019年4月8日記事参照)、連立による新政権樹立に向けて重要な役割を担うとみられており、その動向に注目が集まっている。

元首相で民主党党首だったアピシット氏は、バンコクや南部での敗北の結果を受け党首を辞任したが、選挙戦中は、軍事政権の関係者が長く政権の座に居続けることを支持しないことや腐敗した政治家に協力しないことを述べていた。また、選挙戦の後半では、プラユット首相の続投を拒否する姿勢を示していた。しかし、選挙後のスタンスとして、軍政派である国民国家の力党と連立交渉をするかどうかまでは態度を明らかにせず、あいまいな立場をとっていた。

アピシット氏の辞任以降、民主党の党内情勢は複雑化して主導権争いが始まっており、民主党の選挙後のスタンスは、新党首や新役員に委ねられている。民主党幹部は、反軍政派であるタイ貢献党との連立交渉のうわさを繰り返し否定していることから、軍政派の国民国家の力党の連合に参加すべきと考えるグループ(注1)と、党のイデオロギーを堅持し、有権者に対して誠実であり続けるための独立した野党として、党に「建設的な役割を果たす」ことを求めるグループ(注2)、の2つに分かれている。

いずれにせよ、カギを握る民主党のスタンスが明らかになるのは、選挙管理員会が公式結果を公表する予定の5月9日以降になるとみられる。

民主党はタイで最古の政党で、以前から既得権益層を代表する政党として、バンコクや南部などで支持を集めてきた。また、反タクシン派の中核政党として、軍部との関係も深く、直近では2008年から2011年にかけて政権を担った。

(注1)同党の重鎮で、現在はプラユット首相を支持する政党(民衆連合党)の設立者であるステープ元副首相が主導。同グループは、総選挙で最も多くの票を獲得した国民国家の力党に参加すべきと主張している。

(注2)「ニューデモ」といわれている民主党の若手で、アピシット氏のおいに当たるパリット氏が主導。パリット氏は最近、フェイスブックやツイッターで自分の立場を表明した後、その投稿が共有・拡散され、好感度が一気に高まっている。

(ナオルンロート・ジラッパパー)

(タイ)

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