反軍政派政党、下院の多数派形成を宣言

(タイ)

バンコク発

2019年04月08日

反軍政派の第1党であるタイ貢献党は3月27日、新未来党、タイ自由合同党、国家貢献党、プラチャチャート党、タイ国民の力党の6党による合同記者会見を行い、3月24日に実施された下院総選挙において、独自推計によれば、反軍政派の7党〔新経済党(注1)を含む〕で少なくとも255議席を獲得し、下院の多数派を形成したと宣言した。また、会見では、今回の総選挙で躍進した新未来党のタナトーン党首が、首班指名でタイ貢献党のスダラット党首を支持すると表明したほか、タイ自由合同党のセリピスット党首は、平和と安定の観点から、プラユット首相に対し首相候補から身を引くことを求めた。さらに6党は、軍事政権継続の阻止を目指す宣誓書に署名した。

タイで、総選挙が実施(3月24日)されて以降、国内政治情勢は不透明な状況が続いている(注2)。選挙管理委員会からの最終的な選挙結果が公表されていない中で、軍政派の第1党である国民国家の力党と、タイ貢献党による多数派工作が水面下で始まっている。

国民国家の力党のソンティラット幹事長(前商務相)は3月29日、「正確な議席数が不透明な状況で、かつ選挙管理委員会が最終的な選挙結果を公表していない現状では、タイ貢献党の行動は単なる政治的な策略にすぎない」と反論し、反軍政派の動きを牽制した。また、ウッタマ党首(前工業相)は、5月4~6日に行われるワチラロンコン国王戴冠式後に、連立交渉を実施することを明らかにした。

選挙管理委員会は、4月2日に比例代表の得票数も小選挙区の各政党の議席数もまだ確定していないことを認めており、新しい連立政権の顔ぶれは現時点で不明なままだ。

しかし、軍政派、反軍政派のどちらが勝利したとしても、議席数の差はわずかで、不安定な政治情勢が予想される。今後の連立交渉では、一定の議席を獲得している中規模政党(民主党やタイ誇り党)が重要な役割を担うとみられる。

表 各党が獲得した推定議席数

(注1)新経済党は記者会見に姿を現さなかったが、タイ貢献党のプムタム事務局長は、新経済党が反軍政派に合流することを確認したと公表した。

(注2)タイの政治情勢が不透明な状況となっている要因として、(1)軍政派と反軍政派の獲得票数が均衡していること、(2)比例代表の選出方法が複雑で現時点で選挙結果が公表されていないこと、(3)中小の政党が軍政派もしくは反軍政派どちらを支持するか立場を明確にしていないこと、の3点が挙げられる。なお選挙管理委員会は、5月9日までに最終的な選挙結果を公表するとしている。

(ナオルンロート・ジラッパパー)

(タイ)

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