自動車など産業界はUSMCA影響報告書を支持するも、追加関税に懸念

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2019年04月25日

4月18日の米国国際貿易委員会(ITC)による米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が米国経済や産業に与える影響の報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、および米国通商代表部(USTR)によるUSMCAが自動車業界に与える影響試算PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の発表(2019年4月19日記事参照)を受け、関係する業界団体はそれぞれ声明を発表した。

デトロイトスリーが組織する自動車政策会議(AAPC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは「USMCAが米国の自動車業界とそのサプライチェーンへの投資を促進するというUSTRの分析は思慮深い考察だ」と評価し、原産地規則の変更により今後5年間で自動車業界の新規投資と生産が増加するとのUSTRの見立てを支持するとの声明を出した。

日系・欧州系メーカーも加盟する米国自動車工業会(AAM)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、USMCAの自動車の原産地規則は複雑で追加コストをもたらすが、米国への投資と雇用の増進に資する潜在力があるとする声明を発表した。同時に、世界市場における北米企業の競争力を高めるため、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼・アルミニウムへの追加関税の対象から「カナダとメキシコを除外することが極めて重要」との認識も示した。また、トランプ政権が検討している232条に基づく自動車・同部品への追加関税については、「高度に統合された世界市場において、米国製造業の競争力を低下させ、USMCAによって得られる将来的な恩恵を減じる恐れがある」と警鐘を鳴らした。

農畜産界は早期批准を求める

自由貿易を推進する米国農業団体ファーマーズ・フォー・フリー・トレード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは「USMCAが米国の農家にもたらす真の恩恵は確実性と安定性だ」と述べ、ITCの報告書はUSMCA批准に向けた重要な進展だとした。メキシコへの主要輸出農産品の業界団体である米国大豆協会(ASA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます全米豚肉生産者協議会(NPPC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます全米小麦生産者協会(NAWG)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどは、議会でのUSMCAの早期批准承認を求める一方で、USMCAが農畜産家にとって北米自由貿易協定(NAFTA)同様に恩恵をもたらすものかの見極めが重要との認識を示した。また、NPPCは鉄鋼・アルミニウムへの追加関税の対抗措置として、メキシコが米国産豚肉に20%の報復関税を賦課したことで豚肉輸出が減少していると訴え、追加関税の撤廃を主張した。

通信、IT業界はデジタル貿易条項を重要視

米国電気通信工業会(TIA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますコンピュータ通信産業協会(CCIA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます情報技術産業協議会(ITI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますインターネット・アソシエーション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなど、通信やIT分野の業界団体は総じて、国境を越えるデータ移動の制限禁止や、ソースコードのデータ保護規則などを盛り込んだ、デジタル貿易に関する条項を重視するITCの報告書を評価し、ITCの報告書を足掛かりに、議会でのUSMCAの早期批准承認に期待感を示した。

(須貝智也)

(米国、メキシコ、カナダ)

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