雄安新区、誘致は今後徐々に本格化か

(中国)

中国北アジア課

2019年03月07日

中国共産党中央委員会と国務院は1月24日に「河北雄安新区の全面的な深化に向けた改革と開放拡大を支援することに関する指導意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表するなど、雄安新区の建設推進の動きがみられる(2019年3月5日記事参照)。誘致の現状やビジネスチャンスなどについて、2月末に現地において聞き取りした。

数多くの政府・企業関係者や観光客が訪れている「雄安市民服務中心(市民サービスセンター)」には、既に中国国有企業を中心に入居が進んでいるが(2019年3月6日記事参照)、雄安新区管理委員会の担当者は「雄安新区の誘致の本格化は、基礎インフラ整備が進展してからと考えている」と述べた。地域発展戦略に明るい中国政府系シンクタンクの専門家は「現在は都市構想、基礎インフラ整備の段階で、大規模な誘致はしていない。雄安新区内のそれぞれの位置付けを決め、整備していくには一定の時間がかかる」としている。

北京における大手日系企業担当者数人に聞いたところ、雄安新区管理委員会などからの主体的な誘致は受けていないとのことだった。雄安新区の建設は「千年の大計、国家の重要事項」と表現されるように、産業集積が十分に進んでいない地域を、北京の非首都機能の移転の受け皿、質の高い発展を推進するモデル区などにしていくことから、国家の意向を踏まえながら、今後、誘致も徐々に本格化するとの見方が多い。

ただ、前述の雄安新区管理委員会担当者によると、雄安新区の「先行開発区」の設計案は、全世界から募集し、国内外の12の案に絞り、現在さらにその中から3つに絞ったとしている。いずれも、外資企業の案だとした。雄安新区の1,770平方キロのうち、まず開発を行う地域「スタートアップ区」として100平方キロを設定しているが、その中の38平方キロが「先行開発区」で、現代金融やビッグデータなどの分野のイノベーション型・モデル型プロジェクトの集積を狙っている。

都市発展戦略に明るい中国政府系シンクタンクの専門家は「日本企業は誘致を待つことなく、都市建設段階においてもビジネスチャンスを考えるべきだ」と述べた。そして、地下空間、パイプラインの建設、防災、減災技術の活用など、日本企業には商機があると指摘した。また、雄安新区においてビジネスを展開することは、中国全土にその製品や技術を展開する上でも、大きな効果があるという。

そのほか、雄安新区では、人工知能、ロボット、クラウドコンピューティングなどのイノベーション分野と、エコ・スマート建設、環境など街づくり分野を有望と挙げる声も多い。

(宗金建志)

(中国)

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