雄安の市民サービスセンター、最新技術のショールームに

(中国)

中国北アジア課

2019年03月06日

中国政府が、深セン経済特区、上海市浦東新区に続く国家プロジェクトとして建設を進める雄安新区では、数多くの政府・企業関係者や観光客が、雄安新区の状況を理解するため「雄安市民服務中心(市民サービスセンター)」を訪れている。習近平国家主席も2019年1月に訪問した。2月末に視察した現地の様子を報告する。

市民サービスセンターは、北京市内から高速道路を利用して約2時間の距離にあり、総建築面積が9万9,600平方メートルで、雄安新区管理委員会、規画展示センター、会議訓練センター、行政サービスセンター、商業施設、ホテル、オフィス棟、アパートなどが並んでいる。なお、市民サービスセンター内には、一般車両は入れず、約3キロ離れた駐車場から電気自動車(EV)のシャトルバスに乗り換えて移動する必要がある。

雄安新区管理委員会の担当者は、エコスマートタウン実現の観点から、市民サービスセンター内の緑地を整備しており、低層な建築物のみとしているほか、雨水を浸透させて循環させる仕組みも整備して、「スポンジ都市」を実現しているとした。電線も地下に埋蔵されている。

このほか、市民サービスセンター内には自動運転のテストコースがあり、担当者によると、小型バス、セダン、無人販売車、清掃車が走行している。筆者訪問の際には、百度が主導する自動運転技術プラットフォーム「Apollo」の無人運転技術などを活用した蝸小白の清掃車、新石器の無人販売車が走行していた。また当日は、スモッグ発生で走行を見合わせていたが、通常は金龍客車の小型自動運転バスなども走行しているとのことだった。

写真 自動運転の清掃車(ジェトロ撮影)

自動運転の清掃車(ジェトロ撮影)

なお、市民サービスセンター内には、プレハブユニット工法で建設されたホテル「THE COLI HOTEL」がある。短期間での建設を実現したほか、フロント横の機械で、身分証を登録し、顔写真を撮影すると、顔認証での部屋への入室が可能だ。また、京東の無人スーパーもあり、入口の説明パネルのQRコードをスキャンし、顔写真撮影などを経て登録すると、入口の機械にQRコードをかざし、正面カメラでの認識を経て入店できる。退店する際には、商品についているタグを自動感知して、決済が完了する仕組みになっている。

写真 顔認証で入室可能な「THE COLI HOTEL」(ジェトロ撮影)

顔認証で入室可能な「THE COLI HOTEL」(ジェトロ撮影)

このように、市民サービスセンターは、エコスマートシティの実現のため、各企業が最新のイノベーション技術を示すショールームの役割も担っている。前述の担当者によると、中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行などの銀行や、中国移動、中国電信などの通信会社、アリババ、テンセント、百度などのIT企業などが既に入居している。今後、新たなイノベーション技術が市民サービスセンター内にて展開されるか、各社の動向が注目される。

写真 市民サービスセンター内に入居している企業の例(ジェトロ撮影)

市民サービスセンター内に入居している企業の例(ジェトロ撮影)

(宗金建志)

(中国)

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