欧州委、通商防衛報告書で中国に対する懸念を表明

(EU、中国)

ブリュッセル発

2019年03月29日

欧州委員会は3月28日、「アンチダンピングおよび反補助金、セーフガードなどに関わる報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2018年度版)」を公表し、2018年12月末時点で発動している135件の通商措置(93件のダンピングに対する確定措置、12件の相殺措置を含む)のうち、3分の2が中国からの輸入を対象とするものと指摘。不公正貿易に対する効果的な通商防衛措置の必要性を強調した。

不公正な貿易に対する効果的な通商防衛法制を整備

欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は「開かれた経済には公正な競争環境を維持するための効果的な措置が必要で、現在のようにルールに基づく行動をとらない国が存在する状況では特に重要」と述べた。また、ジャン=クロード・ユンケル委員長は「ここ数年の欧州委の努力が実を結び、現在の世界経済に適した通商措置を整えることができた。今後も不公正な貿易慣行からEUの企業・市民を守るための取り組みを継続する」と語った。

今回の報告書によると、現在のユンケル委員長体制が開始した2014年11月以降2018年末までの間に、新たに発動された通商防衛措置は95件に上り、鉄鋼輸入に対する事案が目立つという。欧州委によると、EUは2018年にアンチダンピングおよび反補助金に関わる通商法制を見直し、不公正慣行の被害を受ける中小企業救済に配慮すべく、より迅速かつ透明性の高い調査の実施や、深刻な市場歪曲を引き起こす恐れのある事案に対し、より高額な課税で対抗するなどの効果的な措置が盛り込まれた。

2018年(単年)では、欧州委はアンチダンピングおよび反補助金措置関連で、新たに10件の調査に着手(このうち、4件は鉄鋼輸入関連)したほか、新たな措置発動のために14件の決定を下したという。また、既存の措置を見直すための調査も17件行い、このうち、7件については措置継続を決めたとしている。緊急輸入制限(セーフガード)については、鉄鋼輸入関連(2018年3月28日記事参照)のほか、一般特恵関税(GSP)ルールの下、カンボジアおよびミャンマーそれぞれに対するインディカ米輸入に関する2国間措置(2019年1月24日記事参照)合計3件の調査に着手したとしている。

(前田篤穂)

(EU、中国)

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