都市交通のスマート化に向けた政策文書を公表

(英国)

ロンドン発

2019年03月26日

人工知能(AI)やセンサー技術などの先端技術は、英国政府が2017年11月に発表した産業戦略における中核の1つで、政府は先端技術を活用した輸送システムの構築を図り、「将来型モビリティー」を4つの産業分野(グランド・チャレンジ)の1つとしている(2018年5月30日記事参照)。そこで政府は3月19日、都市交通へのイノベーション技術の導入がもたらす利益や政府の原則(表参照)を示した政策文書を公表した。政府によれば、自動運転やデータ利用など先端技術が適切に管理されることで、人々の移動が速くなるだけではなく、より安全、簡素化、快適かつ低廉になっていく。また、質の高い雇用の創出や新規投資などが、国内産業にとって大きなチャンスをもたらすとの見方を示した。

表 都市交通の先進化の原則

この政策文書の中では2019年の優先課題として、柔軟な規制枠組みの履行が挙げられている。既に政府は、ゼロ排出車や自動運転、ドローンなどの導入に係る規制整備に着手しているが、それに加えて、マイクロモビリティー(注1)やモビリティー・アズ・ア・サービス(注2)、輸送データの利用、バスやタクシーなどの近代化などに係る規制の見直しを開始する。

政府は、9,000万ポンド(約130億5,000万円、1ポンド=約145円)を拠出して「将来型モビリティーゾーン」を設ける意向だ。最大4地域が選定され、先進的な交通サービスや輸送モデルを導入する地方自治体や企業に資金が付与されるもので、5月24日まで公募が行われている。また、輸送データの共有に向けた基準やプラットホームの構築、低炭素型技術の研究開発促進のための政府基金の継続に加え、地方が取り残されることがないよう、ガイダンスの公表も予定している。

(注1)1~2人の輸送や、公共交通機関から最終目的地までの「ラスト1マイル」用の小型車両(例:電動スクーターや電動バイクなど)。

(注2)さまざまな輸送手段におけるデータや支払いなどの機能を統合・運用することで、1つの交通サービスとして利用すること。

(木下裕之)

(英国)

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