英国政府がノー・ディールへの準備状況を公表

(英国)

ロンドン発

2019年03月01日

英国政府は2月26日、なんらの合意なしにEUから離脱する「ノー・ディール」への準備状況を示した文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。内容は他国との貿易関係の継続、EUとの関係、経済への影響、通関・関税、規制、市民の権利など広い分野にわたる。

他国との貿易関係では、既に複数国と貿易協定や相互承認協定の継続に合意した(2019年2月25日記事参照)。今後も英国政府は準備を進めるが、日本やトルコとの協定は離脱日(3月29日)までの合意は間に合わないという。またEUとの間で、GATT24条が適用され無関税貿易が10年間継続されるという言説については、当該条項の前提や規制面での課題をクリアできないとした1月14日のリアム・フォックス国際通商相の演説を引用している。

また、政府はノー・ディールに関するガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます特設サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを立ち上げているが、企業や個人の準備があまり進んでおらず、その理由についてノー・ディールにより対応が必要となることが十分認識されていないため、としている。例えば、第三国との貿易(通関)には事業者登録・識別(EORI)番号の取得が必要となるが、EU加盟国のみと貿易をしている英国企業約24万社のうち、EORI番号を取得しているのは約4万社にすぎないという。

税関手続きについては、移行簡易手続き(TSP)を導入し(2019年2月7日記事参照)、離脱日から6カ月間はEUからの輸入にも搬入略式申告(ESD)を義務付ける。また、ノー・ディールとなる場合、早急に輸入関税率を設定する、とした。その際には、消費者保護と産業の不当競争の回避との間でバランスを取る必要があり、詳細については今後発表するとした。英国はEU関税率をほぼ鏡映しにした関税率をWTOに提出しているが、現地メディアは、牛肉やラム、牛乳など農産品についてはEUと同水準にする一方、多くの工業製品には関税率を設定しないとする政府の案についても報じている。

規制については、航空や金融サービスなどEUが英国に対して影響緩和のため離脱後も時限的に英国への適用を発表している分野もあるが、個人データ保護に関しては移転に必要な十分性認定をめぐってギャップがあるという。英国政府は、ノー・ディールへの準備に関しては個々の判断に委ねられるものの、準備不足が破壊的な影響をもたらし得るとして、注意を促している。ノー・ディールの際の分野別影響に関してはジェトロ・ロンドン作成の資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)も参照されたい。

(木下裕之)

(英国)

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