英国政府、ノー・ディール時に日本とのEPA継続は困難との見通し

(英国、日本)

ロンドン発

2019年02月25日

英国国際通商省(DIT)は2月21日、EUと合意なく離脱(ノー・ディール)した場合でも、既存のEUと第三国との貿易協定や相互承認協定などを英国が継続するための各国・地域との交渉の進捗を公表した。2月1日に発効した日EU経済連携協定(EPA)については、離脱日(3月29日午後11時)までの継続合意はできない見込みだ。

英国の、EUと貿易協定(注)を締結している国・地域との貿易は、全体の10.8%(日本とトルコを除く)で、EU(49.5%)やその他の国・地域(39.7%)に比べて大きくない。しかし、ノー・ディールの場合、離脱と同時にEUの貿易協定は英国へ適用されなくなる見込みで、WTOルールに基づくものとなる。この状況を避けるため、政府は日EU・EPAを含め27貿易協定、関税同盟などによりEUと緊密な関係にある国・地域との3協定および日本との相互承認協定(2019年1月28日記事参照)について交渉している。しかし、日EU・EPAやトルコとの関税同盟などは離脱日までの合意ができないとし、日EU・EPAはノー・ディールの場合、3月29日までの適用となり、その後は日EU・EPAに基づく税率は適用されず、実行最恵国税率が適用される見込み。相互承認協定は日本と交渉中で、これは離脱日前に継続合意に達する可能性もある。

他方、既に継続合意した国・地域もある。貿易協定では、チリ、フォロー諸島、東南部アフリカ、スイス、イスラエル、パレスチナ。相互承認協定では、オーストラリア、ニュージーランド、米国で、今後新たに合意に達した協定は政府のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開される。

英国産業連盟(CBI)のベン・ディグビー国際貿易・投資ディレクターは、今回の公表は「歓迎できないサプライズ」で、「こういった協定が継続されないリスクは、ノー・ディールが選択肢とならない理由の1つで、われわれの地域社会の雇用を危険にさらす」と批判した。英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長は、交渉が進行していないことに大きな失望の意を示し、最良の方法は秩序なき離脱を避けることで政府はビジネス界と緊密に協議すべき、と警鐘を鳴らした。

(注)貿易協定は、自由貿易協定(FTA)、連合協定、経済連携協定(EPA)を指す。

(鵜澤聡)

(英国、日本)

ビジネス短信 b8e6d3138cbd4c90