USTR代表、対中合意は実効性の伴う枠組みが必要と証言

(米国)

ニューヨーク発

2019年03月05日

米中貿易協議に関する公聴会が2月27日、米国下院歳入委員会で開催され、ロバート・ライトハイザー米国通商代表部(UTSR)代表が証言した。

ライトハイザー代表は冒頭で、中国による技術移転の強制や知的財産侵害、不正な補助金、企業秘密の窃盗などが米国経済を脅かしてきたと述べ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中追加関税措置により、中国が抱える構造問題を初めて是正する機会を得たと主張した。さらに、米中協議は合意に向かって進展をみせているが、まだ多くの作業が必要だとし、「協議の結果を予測するのは時期尚早」と慎重な姿勢を示した。

複数の議員から、中国との合意に達した場合、実効性のある(enforceable)体制を築くことが重要だとの声が上がると、ライトハイザー代表も同意する考えを示し、米中両政府による定期的な会合の場を設け、合意事項を順守しているか監視する体制を中国に求めていることを明らかにした。具体的には、毎月の事務方会合、四半期ごとの次官級会合、半年ごとの閣僚級会合を開き、合意内容の履行状況を協議するとしている。また、中国が違反し、問題が解決できない場合、追加関税を念頭に「相応の措置を一方的に行使する」との認識を示した。

ジャッキー・ワルスキー議員(共和党、インディアナ州)は、中国からの輸入に対するリスト3(対中輸入額2,000億ドル相当の5,745品目)の追加関税に関する品目別適用除外制度の設置に関する対応状況について質問を行った(注1)。これに対してライトハイザー代表は、検討を行っていると述べつつ、リスト3に関する適用除外制度の導入時期や条件に関する明確な回答を避けた。また、「リスト3への対中関税賦課以降、7~8%の人民元安となっているため、実際の影響は追加関税額10%よりも少ない」と述べ、ビジネス上の影響は限定的との認識を示した(注2)。

エイドリアン・スミス議員(共和党、ネブラスカ州)が、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などの発効により、日本市場において米国の農家が相対的に不利な立場に置かれていると述べると、ライトハイザー代表は「近いうちに日本を訪問したい、おそらく3月になる」と述べ、日米貿易協議を3月にも開始したい意向を明らかにした。

(注1)2019年度(2018年10月~2019年9月)の包括歳出法案の解釈文書には、リスト3の追加関税に関する品目別適用除外制度を、法案成立後30日以内に設置させることを義務付ける文言が盛り込まれている(2019年2月26日記事参照)。解釈文書には法的拘束力はないが、通常、関係省庁は記載事項に従う。USTRは301条に基づいて賦課している対中追加関税について、リスト1、リスト2に関しては品目別適用除外制度を設けているが、リスト3については設けていない。

(注2)USTRは、リスト3に対する追加関税率の25%への引き上げは「次の通知」があるまで延期するとの官報を3月5日に公示する外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(須貝智也)

(米国)

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