エタノール15%混合のガソリンの年間販売を可能に

(米国)

シカゴ発

2019年03月29日

米国環境保護局(EPA)は3月12日、エタノールを最大15%含む混合ガソリン(E15)の通年販売を認める規則改定案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、21日の官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に掲載した。公聴会やパブリックコメントなどの手続きを経て、規則を最終決定する予定。

ガソリンにエタノールを混合すると気化しやすくなるため、蒸発した排ガスがスモッグの成分であるオゾンを増加させる懸念がある。そのため、大気浄化法(Clean Air Act)で燃料のリード蒸気圧(RVP)が規制されており、E15ガソリンについては夏季(5月1日~9月15日)の販売ができなかった。今回の規制改定案では、RVP規制を緩和することにより、E15ガソリンの通年販売を可能とするもの。エタノールを最大10%含む混合ガソリン(E10)に対しては、既にRVP規制の緩和措置が講じられており、全米のほとんどのガソリンスタンドでE10ガソリンが通年販売されている。

今回の規則改正案は、石油精製業者にエタノール混合率の引き上げを義務付けるものではないものの、エタノールの販売機会拡大を通じたトウモロコシ農家への支援策と考えられている。米国では、エタノールの多くがトウモロコシを原料に製造されているが、近年はエタノール製造能力が国内需要を上回る状況が続いており、トランプ大統領は中間選挙前の2018年10月に、トウモロコシ生産州であるアイオワ州の選挙集会で、E15ガソリンの通年販売を可能とすると表明していた。

EPAは2001年モデル以降の全ての車種に対するE15ガソリンの給油を認めているが、メルセデス・ベンツ、BMW、マツダなど一部の自動車会社は、E15ガソリンの給油により発生したトラブルを保証対象外としてきた(注1)。今回の規則改定が実現した際には、その対応が注目される。

エタノールを含むバイオ燃料の使用に関しては、再生可能燃料基準(RFS、2018年12月14日記事参照)によって定められているが、バイオ燃料の使用義務が達成できない事業者は、RIN(注2)と呼ばれる売買可能なクレジットを購入することにより、同基準を満たすことができる。EPAは、RIN取引市場の透明化と価格操作の防止を目的とした規則改定案も併せて公表した。

(注1)エタノールはガソリンよりも自動車の燃料システムなどを腐食・劣化させやすい性質がある。

(注2)Renewable identification number:再生可能燃料識別番号。

(上村真)

(米国)

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