中南米進出日系企業調査、為替変動で左右される業績

(メキシコ、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)

米州課

2019年02月08日

ジェトロの「2018年度中南米進出日系企業実態調査」(2019年2月8日記事参照)では、進出日系企業にとって、マクロの情勢変化がプラスにもマイナスにも作用している。

不透明感が漂い、外国為替も大きく動いた国が多い中、2018年の営業利益見込みが「改善」と回答した企業が挙げた理由で最も多かったのは「現地市場での売上増加」、次いで「輸出拡大による売上増加」だった(表参照)。

表 2018年の営業利益見込みが改善する理由(複数回答)

現地市場での売り上げ増加に関しては、前回調査比でメキシコの伸びが目立った。同業種における競合関係で「日系企業」と答えた割合が減っており、メキシコ進出済みの顧客を主な売り先とする自動車部品企業を中心に「競合が新規進出しないことによる先行者利益」を既進出企業が享受したかたちだ。他方、ドル建てで資源を輸出しているチリ、ペルー、コロンビアにおいては、為替変動と関係なく、資源価格上昇で輸出拡大のメリットを受けた様子がうかがえる。対照的なのは、製造業が進出しているブラジルやアルゼンチンで、通貨安は当該国での製造品目の国際競争力上昇というかたちでフォローとなった。あるいは、ドルの可用性(アベイラビリティ)の上昇により、国内オペレーションコストを下げることができた可能性もある。ブラジルでは、管理費など「その他支出の削減」の回答割合が減り、「我慢の経営」からようやく脱却できた企業が散見された。

他方、2018年の営業利益見込みが「悪化」とした企業で、負のスパイラルに陥った企業も多い。特にアルゼンチンにおいては、(1)通貨下落(為替変動)により、(2)金利が引き上げられ、(3)現地市場での売り上げが減少した、ことにより、(4)自社製品は輸入調達コストが上昇しているにもかかわらず、(5)国内の販売価格に十分に転嫁できない、というパターンが多くみられた(図参照)。アルゼンチン進出日系企業で、営業利益見込みが前年比で「悪化」と答えた企業のうち、為替変動をその理由として挙げた割合は、前回調査の0%から93.3%に急増したほか、上記(2)~(5)の項目を「悪化」の理由として挙げた割合が非常に高かった。

図 2018年の営業利益見込み悪化理由:アルゼンチン(n=15)

調査の詳細は、「2018年度中南米進出日系企業実態調査」で参照が可能。

(竹下幸治郎)

(メキシコ、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)

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