2018年度カナダ進出日系企業調査、TPP11利用を検討中の企業は半数近くに

(カナダ)

米州課

2019年02月06日

ジェトロは2018年11月から12月にかけて、「2018年度カナダ進出日系企業実態調査」を実施した。2月6日発表の調査結果によれば、2018年は回答企業の74.8%が黒字を見込む。営業黒字を見込む企業が7割を超えたのは、これで7年連続となり、調査史上で最長となった。2018年の景況感を示すDI値(前期と比較した営業利益の「改善」-「悪化」)は前年比8.2ポイント減の16.8と悪化したが、2019年の見通しは27.3と高く、業績改善を見込む企業が増えている(添付資料図1参照)。

2018年の設備投資は、金額ベースで前年を上回る企業が38.3%で、前年比横ばいは55.4%だった。現地従業員数について、過去1年間に「増加」と回答した企業は33.8%となり、前回(36.6%)から2.8ポイント減少した。今後については40.9%の企業が「増加」を予定している。

ICT分野の活用状況では、スマートフォーンやタブレット端末を導入している企業が84.9%と最多で、モバイル端末(携帯、スマートフォン)の業務アプリケーション連携が55.8%と続いた。

日系企業の国・地域別の調達、販売状況をみると、カナダ国内からの原材料・部品の調達率は36.1%となり、前回調査から1.4ポイント増加した。米国(28.0%)とメキシコ(2.0%)を合わせたNAFTA域内からの調達率は66.1%を占めた(添付資料図2参照)。日本からの調達は18.0%を占め、今後の日本からの輸入でCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定、いわゆるTPP11)の利用を検討中の企業は半数近く(45.0%)に上った。

経営上の課題は「労働者の確保」「賃金(給与・所得)」が上位

経営上の課題(コスト上昇要因)については、「労働者の確保」が59.2%と前回(49.7%)から9.5ポイント増えて筆頭要因となり、「賃金(給与・賞与)」は54.9%と前回(63.6%)から8.7ポイント減少したものの上位に挙がった。また、約2割の企業が課題に挙げた規制面では、前回に続き「環境規制」(56.7%)が課題に挙がり、「労務」(30.0%)が続いた。

NAFTA再交渉結果に対しては、「影響はない」と回答した割合は48.9%で、「分からない」が32.8%、「プラスとマイナスの影響が同程度」が10.9%で続いた。トルドー政権の政策に対する関心分野は、前回に続き「通商」(72.8%)、「税制」(65.4%)、「外交」(58.1%)が上位3項目に挙がった。通商の中でも「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA」」への関心が64.9%(63社)と大きく、続いて「追加関税」(55.7%)、「CPTPP」(38.1%)に関心を示した。

今後の事業展開としては、事業拡大を視野に入れる回答企業は46.2%で、前年から4.1ポイント減少した。現地従業員を「増加する」と回答した企業は40.9%だった。

今後2~3年で拡大を期待する産業分野として、情報通信技術(ICT)を選択した企業が最多で、環境、医療、環境が続いた。前回(2016年)調査に比べて、ICTが30ポイントの大幅増となり、ロボティクス・メカトロニクス4.6ポイント増、農業・食品加工4.2ポイント増となった。

調査結果の概要はジェトロの「2018年度カナダ進出日系企業実態調査」(2019年2月)で閲覧できる。

(松岡智恵子)

(カナダ)

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