インフラプロジェクトで米国製品使用を促進する大統領令に署名

(米国)

ニューヨーク発

2019年02月06日

トランプ大統領は1月31日、インフラプロジェクトでの米国製品の使用促進を目的とした大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2017年4月には政府調達における米国製品の購入・使用を義務付けるバイアメリカン関連法令(注1)の運用を強化する大統領令に署名(2017年4月27日記事参照)しているが、今回の大統領令は、連邦政府の財政支援を受ける全てのインフラプロジェクトを対象に、米国製品の使用を新たに「促す(encourage)」もの。

「連邦政府の財政支援(Federal financial assistance)」の定義は連邦規則2巻200条40項外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで定められており、助成金のほか、現金以外の寄付、融資や借り入れ保証なども含まれる。また「インフラプロジェクト」は、民間のプロジェクトも対象にしている。陸上交通、航空、港湾、エネルギー、パイプライン、水道のほか、ブロードバンドインターネットやサイバーセキュリティーなどを含む広範な分野を例示しており、建設・改修・メンテナンスなどで連邦政府の財政支援を受けた場合が対象になる。

「米国製品」には、全ての製造品が含まれる。特に米国製の鉄鋼製品と見なされるためには、「融解から塗装まで全ての工程が米国内で行われていること」が必要、と明記している(注2)。米国鉄鋼協会(AISI)は1月31日、今回の大統領令を歓迎する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。

大統領令に基づく具体的な措置としては、財政支援を受ける企業に米国製品を最大限使用させるよう90日以内に取り組むことを、関係省庁に命じている。また各関係省庁は、この目標の実現に向けて用いた方法などについて、120日以内にピーター・ナバロ通商製造業政策局長経由で大統領に報告することが求められている。

なお、大統領令は今回の措置は国際協定で定められた義務を逸脱しない範囲で行うとしている。一定規模以上の政府調達における国産品優遇を禁じることを定めたWTO政府調達協定における合意事項は、今回の大統領令による影響は受けない。ただし、WTOの政府調達協定の対象となる州は37州と限られており、民間プロジェクトに対する制限もない。現地の専門家からは、今回の大統領令により、バイアメリカンの対象事業が将来的に拡大する可能性があるとの懸念の声も聞かれる。

(注1)バイアメリカン関連法令とは、政府調達において米国製品の購入・使用を義務付ける複数の規定を指す。連邦政府の規定には、連邦調達での国産品の購入・使用義務のほか、連邦政府が資金補助を行う鉄道や高速道路など陸上交通関連プロジェクトに同様の義務を課すものなどがある。前者は「バイアメリカン法」、後者は「バイアメリカ条項」と呼ばれる。

(注2)商務省が実施した、パイプライン建設における国内鉄鋼製品の使用促進に向けた計画策定のパブリックコメントにおいて、米鉄鋼大手のニューコアとUSスチールはこの条件を支持している(2017年4月28日記事参照)。

(鈴木敦)

(米国)

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