日EU経済連携協定(EPA)が2月1日に発効
(EU、日本)
ブリュッセル発
2019年02月01日
世界最大級の自由貿易経済圏を形成する日EU経済連携協定(EPA)が2月1日、発効した。欧州委員会は1月31日付の発表で、長期に及んだ交渉を経て、ようやく日欧の企業・消費者がメリットを享受できる段階に入ったことの意義を強調した。
長い交渉を通じたEU側の権益実現を評価
欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長は日EU・EPAについて、「(双方の)消費者に安価な商品の選択の幅を広げること」「中小企業にとって新たな海外市場展開の好機となること」「(地理的表示保護制度などを通じて)生産者の権益を守ること」などのメリットが期待できると指摘した。
EU側で交渉を主導したセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は、関税撤廃などの恩恵に加えて、「気候変動に関するパリ協定の順守や労働者の権利、消費者保護など最高水準のEU基準を、初めてEPAに取り込めたこと」の意義を強調した。
また、欧州委は今回のEPAの合意事項について、次の点をEU側の成果として紹介している。
- 日本側のチェダー、ゴーダなどの「チーズ」(これまでの関税率:29.8%)や「ワイン」(これまでの平均関税率:15.0%)の関税撤廃
- 200を超える高品質のEU農産品に関わる地理的表示(GI)保護について日本での保護が保証されたこと
- (サービス市場では)日本の54中核都市における政府調達案件にEU企業の参入を促進し、鉄道分野でも参入障壁を撤廃したこと
- (逆に)EU側にとってセンシティブな自動車分野などでの関税撤廃については、7年という相対的に長期の移行期間を設定したこと
このほか、欧州委は、今回のEPAと歩調を合わせて交渉を進めてきた日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)も同日、暫定適用を開始すること(2018年12月25日記事参照)や、1月23日には日EU間で個人データ保護水準に関する相互十分性を認定(2019年1月24日記事参照)したことも紹介している。また、欧州委はEPA発効後のフォローアップの会合を、2019年4月にブリュッセルで開催することも明らかにしている。
なお、日EU・EPA発効について、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は1月31日付の声明で、「本EPAは『橋を架けることは壁を築くことに勝る』ことを示す完璧な事例だ」との認識を示し、世界的に保護主義が台頭する中で、EUと日本が開かれたルールに基づく貿易を重視する意義を強調している。
(前田篤穂)
(EU、日本)
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