中国系などによる43億ドルのEV用バッテリー素材工場設立が発表

(インドネシア)

ジャカルタ発

2019年01月18日

インドネシアで1月11日、中部スラウェシ州モロワリ県での電気自動車(EV)用バッテリー素材工場(QMB New Energy Materials)の設立が正式に発表された。中国系メーカーを中心とした案件で、投資総額は43億ドルに及ぶ。起工式には、ルフット・パンジャイタン海事担当調整相、アイルランガ・ハルタルト工業相、ハリス・ムナンダル工業省次官らが出席。工場は16カ月で完成させ、ニッケル精錬、水酸化ニッケル製造、コバルト精錬などを行う予定だ。

この工場は中国系と地場系の合弁企業のIndonesia Morowali Industrial Park(IMIP)が運営する工業団地に設立される。IMIPの資本比率は中国の上海鼎信投資集団が49.69%を占める(IMIPウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。現地の報道によると、バッテリー素材工場の投資総額は43億ドル(当初7億ドル)の予定で、バッテリーリサイクル大手の格林美(GEM)、世界最大手のステンレスメーカー青山控股集団、世界最大手のEV用バッテリーメーカー寧徳時代新能源科技(CATL)、日本の阪和興業、前述のIMIPが出資しているようだ。

インドネシアでは2009年に新鉱業法が施行され、2014年から未加工鉱石の輸出が禁止されたことから、各地で銅、ニッケル、アルミナなどの精錬所建設プロジェクトが進められてきた。特にスラウェシ島のモロワリ県を中心に中国系のニッケル精錬所建設プロジェクトが進展し、インドネシアの中でも有数の経済成長率を記録している。未加工鉱石の輸出が禁止された直後の2015年にはモロワリ県の地域内総生産(GRDP)成長率は67.82%、製造業の成長率は338.20%となっていた(中央統計局モロワリ県統計事務所)。ニッケルの恩恵により、中部スラウェシ州の州都パルから遠く離れた辺地が全国トップレベルの経済成長を達成した。2018年12月には空港も開港し、モロワリ県へのアクセスが格段に向上した。

工業省は自国の鉱物資源を活用したEV用バッテリーの国内製造に向けて一歩踏み出した格好だ。インドネシアでは現在、EVの振興に向けた大統領令が準備されているほか、自動車の購入の際に課される奢侈(しゃし)品販売税(ぜいたく品税)を二酸化炭素(CO2)排出量に基づいて改正すべく議論がなされている(2018年9月19日付地域・分析レポート参照)。こうした中、2017年7月にSGMW Motor Indonesia(ウーリン)、11月にはSokonindo Automobile(DFSK)とそれぞれ中国系自動車メーカーが自動車組立工場の操業を開始した。今回、中国勢主導でEV用バッテリー素材工場の建設が始まったことで、中国勢がEV化を機にインドネシアの自動車市場を狙う姿勢が鮮明になっている。

(吉田雄)

(インドネシア)

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