欧州委、対米通商協議に関する進捗報告書を公表

(EU、米国)

ブリュッセル発

2019年01月31日

欧州委員会は1月30日、2018年7月のEU・米国首脳合意(2018年7月26日記事参照)に基づくEU側の履行状況を明らかにする報告書を発表した。EU側は合意の中で約束した「米国からの大豆の輸入拡大」(2018年9月21日記事参照)などの取り組みを米国のトランプ政権にアピールする狙いもあるが、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は、通商協定をめぐる交渉の透明性を強調、EU内部にくすぶる対米通商協議に対する警戒感を払拭(ふっしょく)する配慮も見せる。

対米で“輸入拡大”、対内では“協議の透明性”を強調する欧州委

欧州委は同日、報告書を欧州議会やEU加盟国に送付、対米通商協議をめぐるEU側のコンセンサス形成に努める。EUは米国との協議を加速するため、「上級作業グループ」を立ち上げており、2018年9月10日の初回協議以降、マルムストロム委員がEU側の代表として、米国通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表との交渉を重ねている。

欧州委はEU・米国首脳合意のなされた2018年7月以降、2019年1月末までの期間に同期比で約2.1倍もの米国からの大豆輸入を拡大。米国からの大豆が、EU域内市場で77%ものシェアを占め、米国が最大の供給国となった点を今回の報告書の中で強調している。

また、欧州委は米国産「大豆」のバイオ燃料としての品質要件を認定(2019年1月30日記事参照)、米国産品のEU市場浸透を側面支援する姿勢も打ち出している。

他方、マルムストロム委員は今回の発表の中で、「(米国との)通商協議のプロセスを通じて、最高水準の透明性を担保することを、私は強い信条としている」と語り、対米協議の中でEU側は農産品に関する関税撤廃・低減を提案していないこと(2019年1月21日記事参照)を強調。EU側の農産品関連産業への配慮を示している。

(前田篤穂)

(EU、米国)

ビジネス短信 ba6aaa0ce37646cf