欧州議会、ブレグジット問題をめぐる英国側の方針明確化を要請

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年01月31日

欧州議会本会議は1月30日、英国議会で前日行われた英国のEU離脱(ブレグジット)協定案に対する修正案採決の結果(2019年1月30日記事参照)を踏まえて審議を行い、EUとして重視する「(アイルランドと北アイルランド間の国境問題に関する)平和維持」「域内市場統合」などの原則を尊重する従来の方針を確認。EUと英国政府が合意した離脱協定案の再交渉の可能性をあらためて否定し、英国政府としての今後の明確な方針の提示を求めた。また、関係する欧州議員の大多数が、合意なき離脱(ノー・ディール)のシナリオも念頭に置き、EUとしての周到な準備(2019年1月30日記事参照)の必要性を強調している厳しい現状についても明らかにした。

ノー・ディールのシナリオに言及、現実的な妥協を英国側に迫る

欧州議会に出席した欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は「英国議会での離脱協定に対する議論や修正案採決では、事態は何も変わらない。離脱協定の再交渉はあり得ない」と厳しい現状認識を示した。ノー・ディールについても、アイルランドと北アイルランド間の安全策(バックストップ)にも反対する英国議会の修正案の矛盾を指摘、「英国議会が何に賛成であるのか依然として分からない」と批判した。

同じく欧州議会で英国との協議状況を報告した欧州委のミシェル・バルニエ首席交渉官は、バックストップについて「独善的なものではない。あくまでブレグジットに伴う問題解決のための現実的な解決策を提示しているだけだ」と述べた。バックストップについては、欧州議員の多くも、アイルランドと北アイルランドの平和維持を阻害する懸念があるアイルランド島内の物理的国境の復活に警戒しており、バックストップの必要性を認識しているとしている。

欧州議会は英国政府として事態打開に向けた方針の明確化を求めているが、同時に英国側の方針が固まれば、EUとして英国との円滑な将来関係構築について前向きに検討する用意がある考えも示唆した。

なお、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は1月30日、欧州議会と「2019年欧州議会選挙(2018年5月28日記事参照)に向けてEU市民(有権者)の投票参加促進に協力する覚書」締結を発表したが、この中で、ブレグジットについて「EUにあまりにも長い間、暗い影を落としているが、これによってEUの明るい未来構築が阻害されてはならない」と指摘、新たな欧州議会がEUとしての新展望を開くことに期待感を示した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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