欧州委、合意なき離脱に備えた緊急対策実施を発表

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年12月21日

欧州委員会は12月19日、英国の「合意なき離脱(ノー・ディール)」シナリオを前提に特定分野に関する緊急対策プランの実施を開始したことを発表した。具体的には、11月13日に欧州委員会が発表した通達外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2018年11月14日記事参照)に沿った法案パッケージの提案を12月19日付で行ったかたちだ。欧州委は「2018年末までにノー・ディールに備え必要となる全ての提案を採択する」ことを掲げており、英国がEUを離脱(ブレグジット)するものと見込まれている2019年3月30日(中央ヨーロッパ時間)まで「あと100日」となるこの日、実施に踏み切ったが、あくまで「暫定的な措置」としている。

ノー・ディールに伴う混乱回避に配慮

欧州委は、EUと英国との間で合意した離脱協定案(2018年11月26日記事参照)について、英国議会で承認されるかはいまだに不透明と指摘した上で、12月19日から、年末に向けて緊急対策のための法整備を進めるとしている。今回発表された緊急対策プランの対象分野は「金融サービス」や「航空サービス」「通関」などEU市民(の生活)や企業(の活動)に深刻な影響をもたらす14項目をパッケージとしてまとめたとしている。

例えば、金融サービスでは、デリバティブ(金融派生商品)に関わる中央清算・決済業務(クリアリング)については12カ月間、英国事業者を利用しているEU事業者向けの中央預託業務(デポジタリー)については24カ月間にそれぞれ限定して、ブレグジットに伴う断絶が起きないように配慮するとしている。

また、航空サービスでは、EU・英国間の航空サービスの相互就航を暫定的に12カ月間に限定して認めるほか、航空安全許可の有効期限を暫定的に9カ月間の限定付きで認める方針だ。

このほか、通関関係では、(輸出許可取得が必要となる)二重用途物品について、EU全域に有効な一般許可の対象国に英国を加えるなど、最低限の混乱回避を欧州委は提言している。

欧州委は、これらの暫定措置を実現するための各種法案について、欧州議会、EU理事会に2019年3月29日までの発効に間に合うように採択するよう求めている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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