欧州委、合意なき離脱に備えて「緊急対策プラン」公表

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月14日

欧州委員会は11月13日、英国が合意なくEUを離脱(ノー・ディール)する場合にも備えて、「緊急対策プラン」の概要を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。英国のEU離脱(ブレグジット)交渉については、一部報道などでは実務レベルで交渉が妥結したとの見方もある上、欧州委も「交渉合意に向けて注力している」としているが、依然として最終決着に不透明感が残る中、不測の事態にも備える意図があるものとみられる。

緊急性の高い課題についての方針示す

ブレグジットに備えた企業などの対応に関しては、欧州委は既に7月に政策文書を発表(2018年7月23日記事参照)しているが、今回公表したプランは、ノー・ディールの場合に援用することを迫られる優先度の高い分野を特定し、EUとして実施予定の措置をまとめたもの。具体的な対象として、EU市民や企業に甚大な影響を及ぼす「居住」「滞在許可(ビザ)」「金融サービス」「航空・運輸」「通関」「衛生・植物検疫」「個人データ移転」などの課題を挙げ、援用されるのはEUにとって重大な利益に関わる緊急時に限られるとしている。欧州委は混乱が想定されるアイルランドについて、課題解決に向けた支援を行う方針だ。

また、欧州委は同日、「ビザ」および「エネルギー効率性」について、ブレグジットを踏まえたEU法の修正案が、欧州委員の合議体(College of Commissioners)レベルで採択されたことを発表した。これらの提案は今後、欧州議会、EU理事会の承認を得て発効することになる。

このうち「ビザ」にかかる提案は、英国民に対してビザなしでの渡航を認めるもので、離脱協定案において移行期間終了時点で適用することが想定されているが、ノー・ディールとなった場合はこの措置を2019年3月30日(ブリュッセル時間)から適用する。この提案が発効すれば、離脱日以降、180日の期間ごとに最長90日間まで、英国民はビザなしでのシェンゲン圏での短期滞在が認められる。ただし、これは相互主義に基づいて、英国がEU市民に同等の措置を認めることが前提となる。なお、欧州委によれば、英国政府は観光・業務目的の短期滞在のためのEU27カ国からの渡航者に対して、ビザ取得を求めない方針を明らかにしているという。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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