臨時欧州理事会が英国との離脱協定案を承認、焦点は英国議会

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月26日

欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長は11月25日、臨時招集した欧州理事会(2018年11月16日記事参照)において、英国のEU離脱(ブレグジット)問題に関する離脱協定草案について承認したと発表した。トゥスク議長は2019年3月30日午前0時〔中央ヨーロッパ時間(CET)〕をもって英国がEUから秩序のある離脱ができるように、欧州委員会をはじめとするEU諸機関に手続き着手を要請したが、今後は同協定承認をめぐる英国議会での攻防(2018年11月15日記事参照)で次の山場を迎える。

英国議会が離脱協定案を承認すれば、欧州議会も直ちに承認へ

今回の臨時欧州理事会では、離脱協定案のほか、(EU・英国の将来関係の枠組みに関わる)政治宣言も承認した。EUレベルの協議は大きく前進した。今回の首脳会議をめぐっては、離脱協定案におけるジブラルタルの扱いを問題視するスペインが協定案承認に反対することが懸念されていたが、英国のテレーザ・メイ首相はスペインのペドロ・サンチェス・ペレス・カステホン首相と協議を重ねるなどした結果、こうした事態は打開できたものとみられている。

トゥスク議長は臨時欧州理事会を総括して、「英国とはこの政治宣言の精神にのっとり、できる限り緊密な関係構築を目指す。これがEUとしての決定であることを強調したい」とコメントしている。

なお、今後、EU側では欧州議会での離脱協定案などの審議が2019年初め(2018年11月16日記事参照)に想定されているが、欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長は臨時欧州理事会で、欧州議会が離脱協定と政治宣言の内容について満足していることを表明し、「英国議会が承認すれば、われわれは直ちに必要な手続きを終える用意がある。恐らく、2019年1月にも完了するだろう」と発言している。

ブレグジット問題をめぐって、欧州産業界は厳しい見方を崩していない(2018年11月16日記事参照)が、臨時欧州理事会に先立って2018年11月23日にビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は欧州産業界の総意として、「秩序なき離脱を回避すべく、最善を尽くすことを関係各位に求める」との声明を発表している。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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