ブラジルの新たな自動車政策Rota2030が施行

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年12月14日

2017年末に終了した「Inovar Auto」政策の後継となるブラジルの新たな自動車政策「Rota2030」が、12月10日にテーメル大統領によって裁可され、翌11日の官報に掲載、同日施行された。Rota2030は、2018年7月5日に公表された大統領暫定措置令第843号により時限的なかたちで公布され、その後の議会審議を経て11月8日に上院で可決、テーメル大統領の裁可待ちの状況にあった(2018年11月9日記事参照)。

議会審議の過程では、81もの修正提案が出され、当初の暫定措置令にはなかったインセンティブ条項が付加され、大統領府に法案として送付されていた。インセンティブの中には、北東部やアマゾン地域の生産事業者に対する優遇など、国内生産事業者の間で利害対立の絡むものや、輸出の際の税金還付制度の適用など、WTOルールとの整合性に疑義のあるものも含まれていたが、これらの大部分は、拒否権を有する大統領が削除した上で法律第13755号として正式に成立した。

Rota2030は大きく分けて次の3つの柱から構成されている。

  1. 燃費効率および構造性能・運転補助装備に関する義務的要求の設定:自動車の燃費性能や構造性能・運転補助装備(側面衝突強度、スタビリティ・コントロール・システム、非常時緊急ブレーキなど)に関して義務的な基準を定め、基準を満たした車両には工業品税(IPI)を最大2%まで減額。満たさない場合は課徴金を徴収する。ハイブリッド車および電気自動車については、工業品税率を現行の25%から車両重量と燃費効率に応じて7~20%に低減する。
  2. 研究開発投資に対する税額控除:研究開発投資額(基礎研究、応用研究、実験開発、サプライヤー研修、基礎的製造技術、基礎的産業技術、技術サポートサービスなど)に対して、投資相当額の30%を上限として法人所得税(IRPJ)および社会負担金(CSLL)から控除を受けることができる。戦略的な研究開発投資(先進的製造技術、コネクティビティー、戦略的システム開発、ロジスティック・ソリューション開発、自動運転、ナノテク、ビッグデータ活用、AI活用など)に対しては、さらに15%の控除が上乗せされる。
  3. 国内調達不可能な自動車部品に対する輸入関税免除:自動車部品の調達に際して、ブラジル国産の類似品が存在しない場合のみ3年間輸入関税が免除される(ただし、輸入額の2%相当額以上をブラジル国内での研究開発に投資していることが条件)。

(注)実際には、研究開発投資額の30%を上限とした控除対象額に対して法人所得税(IRPJ)および社会負担金(CSLL)の税率34%を乗じた額、すなわち、30%×34%=10.2%が控除額の上限となる。

(岩瀬恵一)

(ブラジル)

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